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第17話 スズシログループとの繋がり

 今回の仕事の依頼者は、清白(すずしろ) 郭遥(ひろはる)。  郭遥は、スズシログループの御曹司だ。  企業のコンサルや警備、弁護が得意分野だが、貿易などでも業績を上げ、手広く名を馳せている。  その名を知らない人間などいないであろう大手企業、それがスズシログループだ。  そんな表の大企業の御曹司と、裏の世界で生きる俺が、なぜ繋がっているのか。  1年前の人探しが、俺たちの由縁だ。  郭遥には、18歳の頃に仲を引き裂かれた想い人がいた。  相手は、愁実(しゅうじつ) (たもつ)という同級生の男。  同性愛を認めないスズシロの当主が手を回し、仲を引き裂いたのだ。  スズシロの力も使えず、まだ人脈も乏しかった郭遥は、愁実に対する想いに蓋をする。  心の片隅で愛し続けながらも、手段を持たない郭遥には、探すコトは不可能だった。  スズシロのグループの中で着々と力をつけてきた郭遥は、当主交代のタイミングで、当主であった父親への意趣返しとして、秘密倶楽部を始めようと動き始める。  秘密倶楽部という名の御偉いさん相手の完全会員制のゲイ風俗だ。  そのキャストを探すため、たまたま見たゲイビデオに愁実が出演していた。  ずっと、諦め秘めていた想いが再燃する。  スズシロのバックには、比留間(ひるま)という裏世界の大御所がついているのは、公然の秘密だ。  比留間に頼めば、人など、あっという間に探し出してくれるコトだろう。  ただ、その探したい人間というのが、“スズシロ”の前当主である父親が引き裂いた相手となれば、見つかったとしても、自分の元に情報が届く前に握り潰されてしまうだろうと踏んだ郭遥は、なんの(しがらみ)のない三崎を頼った。  事件屋をしていた頃の三崎と所縁(ゆかり)があった郭遥は、その手腕を買っていた。  比留間では事が大きくなってしまうであろう案件を、さざ波程度で片付ける三崎を信頼していた。  ただ、既に事件屋から足を洗って2年程が経過していた三崎は、自分で探すよりも早いだろうと、俺を紹介したのだ。  愁実を探し出した俺を郭遥は、いたく気に入ってくれた。  お陰でこうして、ちょこちょこと仕事を依頼してくる。  比留間との関係は、公然の秘密として(まか)り通るが、俺との関係は、大っぴらに出来るものではない。  それは俺が、表舞台では、そこまでの大物ではないからだ。  ただ、小物は小物らしく、面が割れていない分、動きやすいという利点もある。  世間様には公にできる関係ではないが、明琉に郭遥の素性がバレても、問題はないだろうと踏む。  郭遥のコトだ、信頼している三崎からの紹介者である俺を1ミリも疑わなかったように、明琉も受け入れてくれるだろう。  置いていって不貞腐れられるくらいなら、連れ歩く方が、俺の気も楽だ。 「明日、一緒に行くか?」  言葉に明琉は、きらきらとした瞳で俺を見やる。 「依頼者のコトは、他言無用だからな。俺から情報が洩れたなんてコトになったら、干されるどころの騒ぎじゃねぇからな」  俺の言葉に、明琉は何度も首を縦に振った。

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