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第23話 都合のいい解釈

「聞いてねぇっ。こんなん、聞いてねぇ!」  衣食住の面倒を、見てやると言われた。  性欲の解消にも、手を貸すと言われた。  でも、刺青を入れるなんて、…痛い思いをするなんて聞いてない!  処置台に括りつけられながらも、納得がいかず、文句を垂れた。 「嫌だよ。なんで? 何でオレがそんなの入れなきゃなんねぇのさっ」  刺青自体が、嫌な訳じゃない。  でも、意味もわからず、痛い思いなどしたくない。 「入れんのが嫌なら、傍には置けねぇ」  天原の言葉に、眉を潜める。 「俺の傍に居るんなら、俺と繋がってるっていう(しるし)つけとかねぇと、お前が危ねぇんだよ」  俺の仕事、知ってんだろ? と瞳で訴えてくる天原に、うぅっと唸り威嚇する。  折れないオレに、天原は別の案を出してきた。 「そんな嫌なら、郭遥のところでも行くか? あいつのとこなら、住み込みのバイト扱いにしてもらえるだろうし、食いっぱぐれるコトねぇだろうな」  俺が面倒見なくても生きていけるだろ、と投げ遣り気味に放たれる提案に、それは嫌だと、むすっと全力の不機嫌顔を曝す。  なかなか折れないオレに、天原の盛大な溜め息が響く。 「……わかったよ。これ入れたら携帯買ってやる。あと、危なくねぇ仕事なら連れてってやる」  どうだ? と言わんばかりに、じっと真剣な眼差(まなざ)しで見詰められた。 「ぐぬ。……わかった」  携帯にも惹かれたが、仕事に同伴できるコトの方が嬉しかった。  入れられた刺青は、やっと痛みも引き落ち着いてきた。  オレは天原のものなのだと思うと、心の底が擽ったかった。  オレが危なくないようにと刻まれた刺青だ。  それは裏を返せば、大切な守りたいものと解釈するコトだって出来る。  都合のいい解釈だとしても、オレがそう思う分には、構わないはずだ。  天原が持っている感情は、恋愛のそれじゃないのだろう。  それでも、オレは天原のものになった。  鮮やかに咲く白いユリが、オレの心を踊らせる。

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