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第24話 相当なご執心 < Side 郭遥

 ははっと、愁実が笑い声を立てた。 「どうした?」    まだまだ開店準備の終わらない、ビルの1階に入れた完全会員制のバー。  まだ1人の会員もいない為、準備にどれだけ時間をかけようが、問題はない。  表の仕事を終わらせるために1度離れたが、夕方過ぎに愁実の手伝いをするために、ここに戻った。  手を止め、視線を向ける俺に、愁実は携帯の画面を向けてくる。 『明琉です。携帯、買ってもらいました。代わりに、これです』  そこに表示されていたのは、たぶん明琉の脇腹であろう場所に刻まれた白いユリの刺青だった。  こんなものまで刻み、天原は明琉を手放す気は更々ないといったところか。  相当、ご執心らしい。 「天原。相当、本気みたいだね」  微笑ましい気持ちが半分と、心配が半分といったところだろう。  何ともいえない顔で笑んだ愁実は、深く息をつく。 「“俺のもんに唾つけんな”って本気で威嚇されたもんな」  その時を思い出し、ははっと笑い声を立てた。  俺にしてみれば、勝てないとわかっているのに噛みついてくる子犬のようなものだ。  それでも、取られるのは我慢ならないと挑んでくるくらいには、想っているのだろうとは思っていたが。 「これは、本気だろうな……。刺青なんて入れさせて、ウザがられなきゃいいけどな?」  呆れが混じる瞳を向ける俺に、愁実も神妙な顔をする。 「揶揄って遊んでる感じだったけど、あれは完全な照れ隠しだったってところかな。明琉もここまで許すってコトは、満更でもないのかな……?」  天原が本気なのは簡単に察しがついたが、出会ったばかりの明琉の感情は、まだ読み解くのは難しい。 「ま、俺たちが心配することじゃねぇよ。…でも、俺が煽ったせいかもな」  ぼそりと零した俺の言葉に反応した愁実は怪訝な瞳を向けてくる。 「あんな仕事してるのに連れ歩いて、携帯すら持たせてないって…危機感、無さすぎだろ」  ここまでするとは思わずに、“かっ拐われても知らない”と、軽い気持ちで尻を叩いてしまった自分に苦笑する。  でも、周りに天原のものだと知らしめておいて、損はないだろう。

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