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第28話 知らないのは、お前だけ
「お前まで、相手に渡すわけにはいかないんだ。今、狙われているのは、ほぼ間違いなくお前だ」
俺の言葉に、眉根を寄せた明琉は、思ったコトを、そのまま紡ぐ。
「意味わかんねぇ。どこをどうしたら、オレが狙われるなんて結論に辿り着くんだよ……」
苛立ちと呆れが混じる音で言葉を紡いだ明琉は、腹立ち紛れに俺に当たらないようにと、面白くなさげにカウンターを睨 めつけた。
「お前が天原の“弱点”だからだ」
凛とした淀みのない声に、明琉の瞳が再び俺を捉えた。
「弱点…、って……」
さらに意味がわからなくなったとでもいうように、明琉の顔の歪みが酷くなる。
話の核心を掴みきれていない明琉に、俺は手を伸ばす。
「お前は、天原の“宝物”なんだよ」
シャツの下に隠された明琉の脇腹に咲く白いユリの花に触れる。
「お前以外、誰でも知ってるコトだ」
指先で、とんとんっと刺青の場所を叩きながら、言葉を繋ぐ。
「これは、お前の身を守るためでもあり、自分のものだと……大切なものだと周りの人間に知らしめる証だ」
俺の言葉に、明琉はシャツの裾をぎゅぅっと握り締めた。
「お前は、自分のためにも…、天原のためにも、自分自身を守るコトに全力を尽くせ」
いいな? と念を押す俺に、明琉は、ぐっと強く瞳を閉じた。
「天原のコトは、俺が何とかする……」
涙を堪えるように俯く明琉の頭を、くしゃりと混ぜた。
俺の予測では、天原はまだ殺されてはいないはずだ。
明琉を探しているコトを考えれば、天原の前で大切なものを壊してやろうというゲスな仕返しを考えているに違いない。
そうなれば、天原が生きていなくては意味がない。
多少の暴行は受けているとしても、ギリギリでも、たぶん命は繋がれているはずだ。
天原を救うために、比留間の力を借りてもいいが、探りを入れているコトが黒藤側に露見すれば、天原の身に危険が及ぶ可能性も高い。
監禁場所も割れていない今、出来るなら静かに事を運びたい。
断られるかもしれない覚悟を持ちながらも、俺は電話を鳴らす。
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