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第33話 生きた心地のしない夢

「………っ!」  カッと瞳を開き、身体を起こそうと力を入れた瞬間、激痛に苛まれる。 「まだ、無理だよ」  微塵も動かなかった身体の左肩を、ぽんっと叩かれた。  触れられた感触に、痛みに歪む顔を向けた。 「調子に乗りすぎたみたいだね」  そこには、呆れたような瞳を向ける三崎の姿があった。  状況が飲み込めない俺の身体は、柔らかなベッドの上に寝かされ、至る所にガーゼや包帯が巻きついていた。  ガーゼが掠った右胸の火傷に、ジリッとした痛みが走った。 「っ…、明、琉……」  放った声は、ガサガサに荒れていた。  数秒前まで、目の前で明琉が嬲られていた。  叫ぶ声は音にはならず、拘束されていないにも関わらず身体は微塵も動かない。  心臓が激しく音を立て、呼吸が荒れた。  電源が切られたかのように、ぶつんっと俺の視界が真っ暗闇に染まる。  何度も(まばた)いても、視力は返ってこなかった。  ぐっと閉じた瞳を力の限り開き、強制的に夢から目覚めた。  それが夢だとわかった今も、生きた心地がしない。  重い左手を伸ばし、三崎の袖を掴む。 「郭遥の所に居る。安心していいよ」  力の入らない指先を柔らかく剥がされた。 「直は、いい人脈に恵まれたね。直と直の大事なものが守られたのは、郭遥のおかげだよ。彼にそんな義理はないのにね。感謝しないとね」  三崎の手が俺の頭に伸び、柔らかく撫でていく。  20代後半のいい大人の俺を捕まえ、三崎はまるで子供をあやすように頭を撫でてきた。  ぷつりと切れた緊張の糸。  急に襲い来る安堵感に、三崎の優しい手が俺の感情を昂らせた。  ぶわりと沸き上がる涙が、瞳から溢れる。 「ぅ………く、そ……っ」  恐ろしかった。  大切な人が穢され、壊されていく。  目の前で繰り広げられる惨劇に、手も足も出せない無力な自分が惨めでならなかった。  自分の未熟さに、痛烈な後悔が押し寄せる。  声を殺し泣き続ける俺に、三崎は黙ったままに頭を撫で続けた。

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