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第35話 伝えなくてはいけないコト

 一頻り笑った三崎は、小さな溜め息を吐く。 「直は、臆病と罵られようと、もう少し慎重に仕事を進めるべきだったね」    俺は、天狗になっていた鼻っ柱を、ぽっきりとへし折られた。  でもそれは、慎重さを欠いた自分が、悪いだけのコト。 「直は暫く、ここにいてね」  三崎の言葉に、疑問符を浮かべその顔を見やる。 「あいつが黒藤を潰せていても、きっと現状は変わらない。直に怨みを持つ人間は、黒藤だけじゃないからね。こんなボロボロの状態じゃ、次こそ殺られかねないでしょ?」  次は助けられる保証がないと暗に示してきた。  俺は、助けられた恩義がある以上、三崎に逆らう気など毛頭ない。 「黒藤の取り巻き…、ユリの刺青を持ってるコが、直の大事な人だって知恵つけられたんだよね?」  確かに、黒藤は俺の刺青を男たちに曝し、人探しを命じていた。  右の胸許に向けた瞳には、真っ白なガーゼだけが映り込む。 「直を(おびき)き出す餌として、利用される可能性があるから、明琉にも暫くは自由に出歩かないように釘を刺しておくべきだね」  三崎は、俺に携帯を差し出してきた。  その画面には、郭遥の番号が表示されていた。  そのまま、郭遥へと電話をかける。  呼び出し音が鳴る直前に、電話が取られた。 「見つかったのか?」  数秒の沈黙と扉の開閉音の後、焦った音を纏う郭遥の第一声が耳に届く。 「迷惑かけて、すいません……」  ひゅっと息を吸い込む音が届き、ゆったりと吐くように言葉が紡がれる。 「天原……。無事、なんだな?」  微かな震えを纏う声が耳に届き、心配をさせてしまったコトへの申し訳なさが湧いてくる。 「無傷では、ないっすけど」  情けなく自嘲するように放った言葉に、ふっと安堵するような息遣いが聞こえた。 「明琉、匿ってもらってるみたいで……」  引け目を感じながら紡いだ俺の言葉を郭遥は、鼻であしらった。 「大したことじゃない。気にするな。会いに来れるか?」  無傷ではないという言葉に、郭遥は俺が動けるのかと確認してきた。 「黒藤、潰せてないんだ。……明琉も、危ない」

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