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第45話 煽ればいい

 オレの意図を汲み取った天原は、視線を画面に戻し、さらりと声を返した。 「俺は、ゲイだよ」  無表情のままに声を放った天原は、平坦な音で言葉を繋ぐ。 「でも、勃たねぇから無理」  悪ぃな…と、心の籠らない謝罪を受けた。  身体を離し、画面と天原の視線の間に顔を捩じ込む。  じっと見やるオレに、天原は逃げるように身体を反らせた。 「オレ、そんなに魅力ない?」  物憂げな雰囲気を纏い問い掛けるオレに、天原は疲れたような息を吐く。 「お前が、どうとかじゃねぇよ」  ぽすりとオレの頭に乗せられた天原の手が、くしゃりと髪を混ぜる。  面倒な質問をしてくるなというように、オレの気を逸らそうとする天原の態度が、気に食わない。  子供扱いされたコトにも、腹が立つ。 「オレの裸見たら、勃つかもよ?」  魅力や色気の問題じゃないというなら、煽ってやればいい。  その気になるように、オレが天原の性欲に火をつければいい。  天原の前からソファーへと身体を戻し、徐にスウェットの裾を引き上げる。  服を脱ぎ捨て、上半裸で天原の膝の上に乗った。  腿を跨ぎ、膝立ちの状態で天原を見下げながら、口を開いた。 「ものは試しでしょ」  天原の両肩を押さえ、顔を寄せた。  なんの抵抗もなく、天原はオレの唇を受け入れる。  ちゅ、くちゅっと、わざとに音を立てながらその唇を貪った。  避けない代わりに、攻めても来ない。  天原は、オレにされるがままに唇を犯される。  少しはその気になってきたかと、顔を離した。  自分の唇に舌を這わせながら、見下げたオレの瞳には、困り顔で笑む天原の姿が映る。  息が上がっているのは、オレ1人だけ。 「満足した?」  唾液に濡れるオレの唇を親指で拭いながら聞いてくる天原に、胸がジリジリとする。 「こんなんで満足するわけねぇじゃん」  首筋に顔を埋め、外腿から股間に向け、手を這わせた。  緩く握り込んだそこは、確かに反応が薄い。  でも、完全な無反応というには、無理のある硬さを指先が拾う。 「勃ってきてんじゃん」  身体を起こし、したり顔で口角を上げるオレに、天原は抵抗もしなければ、乗り気にもならない。  止まらなくなるくらい、煽ってやるよ。

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