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第46話 音にならない謝罪
オレの負けん気が、要らぬ気合いを呼び起こす。
膝の上から降り、天原のジャージのゴムに指を掛けた。
下着もろとも引き下げ、力なく露になるそこに唇を寄せる。
ちゅっと音を立て触れたところで、天原のペニスは微塵も反応を示さない。
あざとく天原の顔を見詰めながら、舌を絡め、口腔内へと誘った。
半勃ちのペニスを、唇と舌で刺激しつつ、唾液を絡ませる。
見詰めるオレの視線から逃げるコトなく、天原の瞳も、じっとこちらを見やっていた。
額や頬にかかる髪を、天原の指先が柔らかく後ろへと流す。
あえて舌をちらちらと覗かせ、視界からも興奮を煽る。
直接的な刺激と、視覚と聴覚に訴える。
天原の瞳が、少しずつ獣の色を纏い始める。
硬さが増した唾液塗れペニスを、でろっと口から吐き出した。
オレの方が堪んねぇわ……。
下着ごとスウェットを脱ぎ捨て、天原の膝に跨がった。
左手で腹に向け反り返るペニスの角度を弱め、天原の右胸に手をつき、身体を支える。
下に向けた瞳に自分のペニスが映り込む。
涎を垂らし、上を向くペニスは、オレの興奮度合いを表し、もう待てないと言わんばかりに張り詰めていた。
ぷちゅりとオレのアナルと天原のペニスが触れた瞬間、右胸に触れていた手首が、ぐっと捕まれた。
「悪ぃ。やっぱダメっぽいわ……」
手首を掴む天原の手が、小刻みな震えを伝えてくる。
持ち上げたオレの視線には、申し訳なさげな雰囲気を纏う天原の顔が映った。
さっきまで漂っていた色香が、じんわりと散らばり消えていく。
右手で掴んでいた天原のペニスが、じわじわと力を失っていった。
興奮に熱くなっていた空気が、寒空の下に放り出されたように温度を失っていく。
ここから盛り返すのは、不可能だ。
諦めたオレは、身体を反転させソファーに沈めた。
天原は、片手で顔を覆い、天井を仰ぐ。
「……抱くか?」
ぼそりと放たれた天原の言葉に、オレは訝しげな瞳を向けた。
気持ちを落ち着けるように小さく息を吐いた天原の瞳が、オレの股間をちらりと見やる。
「そのままじゃ、辛いだろ」
乗り気じゃないクセに。
無理をしてまでオレに抱かれる必要なんて、どこにもない。
ただオレが勝手に盛って、乗っかったんだ。
なんで、あんたが責任、感じてんだよ……。
「あんた、ネコじゃないでしょ」
不貞腐れたまま、鼻であしらう。
「それにオレは、抱いてほしいの………」
思わず零れた言葉に、自分でも驚く。
だけど届いてしまった言葉は、取り消しようもなくて、視線を外して逃げるのが精一杯だった。
天原は何も言わずに、オレの頭を片腕で抱き寄せ、鼻先を埋めた。
“ごめん”と音にならない謝罪が、オレに注がれる。
謝るのも違うと感じたのだろう天原は、暫くオレの頭に顔を埋めていた。
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