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第50話 寄り道
透かして見えたのは、花のような絵だ。
「お前、刺青いれてんの?」
「ん? ………ぁあ」
中途半端な間を空け、明琉は肯定した。
「いいな……」
無意識に言葉を零し、もっと透けて見えないかと、シャツを押しつけていた。
少し悩むような沈黙を挟んだ明琉は、シャツを引き上げる。
そこに見えたのは、綺麗な白いユリの刺青だ。
「綺麗だな。どこで入れたの?」
見せられた刺青に瞳を奪われながら問うオレに、明琉は少し困ったように言葉を紡ぐ。
「……凌空さん所。ってか、オレの刺青はどうでもいいだろ」
持ち上げていたシャツをすっと下ろした明琉は、手にしていたDVDをプレイヤーにセットする。
再生されたその映像は、防犯のための隠しカメラで撮られたものらしく、映像に音はなく、一定の場所のみを映し出す。
ホテルの一室のような空間に、大きなベッド。
姿を見せた1人の男は、真っ黒なバスローブを纏い、顔には簡素なドミノマスクが着けられていた。
一度その場から消えた男が、再び同じような格好の男を連れ、画面に入ってきた。
そこからは、2人の男が絡み合う情事の映像だ。
1人の男が仰向けに横たわる男に跨がり、首を仰け反らせながら腰を振る。
聞こえないはずの息遣いが聞こえてきそうだった。
「この上に乗ってるコが出たいって言ってるコなんだけどさ」
明琉は再び鞄を漁り、クリアファイルに挟まれた資料を取り出した。
見せられたのは、履歴書のような資料だ。
住所や連絡先は記載されていないが、身長、体重などの身体的な項目が多く記されていた。
“JOUR”に関するコトは、一切明記されていない。
資料には、可愛らしい顔写真も挟まっていた。
顔も身体も、見た目的な部分での問題はない。
「ネコでいいんだよね?」
資料に目を通しながら、問う。
「うん、そう。羽雨ちゃんの相手になるんだよね? “具合”を確かめるなら、手配するけど?」
実際に抱いてみたいのならと首を傾げてくる明琉に、オレは遠慮する。
「いや、それはいいや。一旦、持ち帰ってもいい?」
資料を畳み、顔横で振って見せる。
「DVDは渡せないけど、その紙だけならいいよ。でも、見せんのは三崎さんだけね」
「了解」
近いうちに返事をすると話をつけ、オレは資料片手に帰路に着く。
三崎の元に戻る前、オレはある場所に寄り道をする。
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