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第51話 管理の仕事 < Side 郭遥

 天原が助け出されたあと、黒藤絡みの人間は比留間に始末してもらった。  明琉には、働く必要はないと告げたが、おんぶにだっこという訳にもいかないと、“JOUR”のキャストとして仕事をすると譲らなかった。  “JOUR”の顧客は、格式の高い家柄の者ばかりで、黒藤のような中途半端なチンピラ風情は存在しない。  “JOUR”のキャストの制服は、明琉の刺青の入った脇腹も見える露出度の高いものだったが、その身が危険に曝されるコトはなかった。  開店から2年を過ぎた頃、愁実1人で全てを管理していくのが厳しくなっており、明琉を引き抜き、キャスト管理の仕事を任せた。  それまでキャストとして働いていた明琉は、客の好みも把握しており、他のキャストとの関係も良好だったため、管理の仕事に、すぐに馴染んだ。  キャストとして働いていた2年間、念のため明琉を外に出さなかったが、脇腹の刺青など普通にしていれば、そう簡単に人の眼に触れるコトなどない。  そこまで神経質になる必要もなかったと、思ったよりも動揺していた自分を嗤った。  店全体の管理を愁実に、キャストの面倒を明琉に任せ、“JOUR”の運営も軌道に乗ってきた。  4年目ともなると、2人で店を回すのは、なかなかのハードワークとなっていた。  さらに、キャストの確保が、そう簡単に出来なくなってきていた。  実質は、比留間が運営しているスズシログループ傘下の“クラルテファイナンス”という金融会社がある。  そこに借金のカタに売られてきた者を囲いキャストとして働かせていたが、思ったような人物がいつでも手に入る訳ではない。  そんな時、“JOUR”の噂を聞きつけた比留間に1枚噛ませろと言われ、黒藤を処理してもらった恩もあり、息子の礼鴉(らいあ)をキャストの管理者として雇い入れた。  比留間から、“JOUR”のキャストとして働くのに適していると思われる者の情報も入るようになり、キャスト不足は解消された。  当たり前だが、借金のカタとして囲ったキャストは借金がなくなれば、“JOUR”からは離れる。  借金を完済したらメディアに出たいと言っているコがいると、明琉から聞かされていた。  三崎の持っているレーベルの中に、恋愛を主体とした男性同士を扱っているものがあった気がして、電話をかけた。 「三崎のところなら、俺も安心できる。逆に、JOUR(うち)で働きたいってコがいるなら、雇ってあげてもいいよ」  身辺調査はさせてもらうけどな、と付け足す俺に、三崎は電話口で逡巡し、口を開く。 「俺よりも適任がいるから、そのコを行かせようと思うんだけど、いい?」  三崎が信頼している相手ならば、問題はないだろうと、俺は了承の意を伝えた。

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