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第52話 俺が切った繋がり
電話を切った後、ふと天原の姿が脳裏を掠めた。
あの騒動のあと、数ヶ月後に掛かってきた天原からの電話は、明琉のためにいくら払えばいいかという打診だった。
「ゼロだ」
なにも払う必要がないと伝えた言葉に、天原は二の句を継げない。
「明琉は自分で稼いでいる。お前に請求するものなんてないよ」
2人の仲を引き離すつもりで言った訳ではなかった。
ただ、事実を伝えただけだ。
それでも、天原には堪えたらしい。
一瞬の間を挟み、天原が口を開く。
「そう、…かよ。もう俺は必要ねぇってコトか」
天原を責めるつもりなど、さらさらない。
でも、お前が必要だとは言えなかった。
恐怖に負け、明琉の手を放したのは、天原だ。
天原に手放され、別の道で生きていくと決めた明琉の覚悟を踏みにじる訳にもいかない。
俺のこの対応が、2人の関係を裂く決定打となったのかもしれない。
それを望んでいたはずなのに。
微かに繋がっていた糸すら俺に切られてしまった天原は、それが最善なのだと無理矢理にでも自分を納得させた。
未練など、縁など、全て断ち切るべきなんだと、それ以来、天原からの連絡はなくなった。
“JOUR”の一角、地下1階にあるモニタールームで明琉の戻りを待っていた。
メディアに出たいと相談された当人であり、キャストについての質問を投げられてもその場で即答できるであろうと、この件に関しては、全てを明琉に任せようと考えていた。
出演の話は聞いて貰えるコトになったが、代理を寄越すという三崎に、もしかしたら天原が来るかもしれないという俺の憶測を明琉には話しておいた。
天原が来るかもしれないのなら行きたくないと言うのなら、礼鴉に振ってもいいと思ったが、明琉は微塵も気にする様子もなく、俺が手配したレンタルミーティングルームへと出掛けていった。
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