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第63話 行方不明になど、なりようがない

 羽雨の姿が見えなくなったのをきっかけに、郭遥が徐に口を開いた。 「会っていかなくていいのか?」  再会を促すべきなのか、引き離すべきなのか。  郭遥自体、どちらが正しい選択のなのかわからないというように、その言葉は躊躇に揺れていた。 「会う必要、ないでしょ…。俺の手、離れて5年も経ってるし。ここにいるのも、俺のせいだし……」  俺とさえ出会わなければ、もっと真っ当な世界に居られたはずで。  俺は未だに、運命の悪戯を悔やまずには、いられない。 「お前のせい…、ね。キャストとして働かせてしまったのは、申し訳ないと思っているんだ」  感じる引け目のままに、情けない顔で俺を見やる郭遥。  俺は、頭を振るって否定する。 「いや。郭さんが気にすることじゃないでしょ。そもそもは俺のせいなんだから」  ふぅっと疲れたように息を吐いた郭遥は、贖罪のように明琉の話を続けた。 「働かなくていいと言ったんだがな。何もせずにいるのは(しょう)に合わないって言い出してな。……キャストとして働いたのは2年くらいだぞ。そのあとは管理側に引き抜いた」  なかなかのやり手で、思った以上に助けられたよ…、と郭遥は自慢げに笑みを深めた。 「この前、三崎が代役を寄越すなんていうから、てっきりお前が来るのかと思ってたんだけどな」  期待が外れたとつまらなそうな顔を向けてくる郭遥に、俺は思ったコトをそのまま伝える。 「メディアで使うんなら、羽雨の方が見る目があるんで俺じゃなかっただけですよ」  さらりと返した俺の言葉に、郭遥は少し残念そうな声を紡ぐ。 「お前が来るかもって明琉には伝えたんだ。会いたくないのであれば、別の者を向かわせようと思ったんだが。あいつ、何事もなかったように出掛けてったから、少しは再会を期待してのかもな……」  ちらりと“JOUR”に続く扉へと視線を投げる郭遥に、俺は今更だと返事を省く。 「羽雨に会ったって、明琉は喜んでたけどな。でも、刺青をどこで入れたんだって食いついてきたって聞いて、お前が行方不明で探してんのかと思ったよ」  なんで俺が行方不明だなんて話になったのかと、訝しげな瞳を向けた。  真意を探る俺に、郭遥は言葉を足す。 「お前を探すのに手詰まりにでもなって、凌久経由ででも情報を集めようとしてるのかって勘繰ったんだよ」  郭遥の視線が、俺の右胸へと向けられた。 「ぁあ。そういうこと。でも、俺は、ずっと恒さんの所にいましたよ。羽雨の家に転がり込んだんで、行方不明になんてなりようがないっすよ」

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