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第91話 些細な震え
シャツと肌の間、脇腹から背へと艶かしく指先を滑らせ、男らしい天原の身体を抱き締める。
素肌の温もりが、オレにじわりと伝わってくる。
胸許につけた耳に、天原の心音が響く。
天原の緊張感を伝えるように、重く早く鼓動を響かせていた。
「オレにも触ってよ」
されるがままで棒立ちになっている天原の手を、左足の刺青へと導いた。
オレの左腿に触れた天原の手が、神経を尖らせなければわからない程度の、ほんの些細な震えを纏う。
この震えは心の奥底にあるもので、意識したからといって払えるものじゃない。
天原自身すら、感じていないものだろう。
明琉への蟠りは、消えたはずだ。
でも、懸念が拭われスッキリしたからと、不安も全て一掃されたかと言えば、そうとも限らない。
勃たないかもしれないという憂慮が、天原の心の片隅に巣食っている。
複雑な人間の心は、一筋縄ではいかないものだ。
天原がそれに気づく前に、気を紛らす方法を模索する。
監督としての仕事は、なんの問題もなく遂行している。
オレの出演作を見ながら、無意識ではあるが、股間を弄っていたコトだってある。
仕事の要素を強めれば、意識が逸れる…、かもしれない。
傍を離れ、クローゼットへと足を向けた。
天原は、不思議そうにオレの動向を見守る。
クローゼットに押し込まれている玩具箱。
仕事柄、撮影で使った玩具を試供品だと譲られるコトが多々あった。
1人で暮らしていた頃は、よく使っていたものだ。
適当にいくつかを見繕い、ローションのボトルと共に、ベッドの上に放った。
「そこで見ててよ。次回作の構想でも練るつもりでさ。なんなら、撮ってもいいよ?」
ベッドに乗りつつ、声を放つ。
レンズ越しなら、いつもの撮影と一緒だ。
不安が心を支配する前に、興奮に塗れてしまえと、オレは天原を煽るコトにした。
リアルな形を模したグロテスクな玩具を片手に握り、はっきりと浮き上がる勃起したオレのペニスを見せつけるように、大胆に足を開く。
窮屈な下着の上から、その形を強調するように、ゆるりと撫で上げる。
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