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第93話 願望は飲み込まれる

 照れからくる恥ずかしさに、瞳が游ぐ。  揺らいだ視界に映った玩具に手を伸ばすふりをして、天原に背を向けた。  レンズさえ、天原の姿さえ見えなければ、少しは落ち着ける。  馬鹿みたいに激しく鼓動する心臓を宥めようと、深く呼吸する。  冷めたのかと思われたくないオレは、両肩をベッドにつけ膝を立て、レンズに向け尻を曝した。  足の間から伸ばした手で、ペニスに垂らしたローションを掬い、自分のアナルに触れる。  撮影で、カメラの前で虐められていた“小鳥“の姿を思い描き、追随する。  早く欲しくて堪らないと、ぐちぐちと自分の指で解す姿に、オレは煽られた。  同じように、天原の雄を揺り起こそうと、オレは自身を虐める。  天原の気を逸らそうと始めたコトだが、じわじわと肉欲に飲み込まれていく。  柔らかく解したそこに玩具を宛がい、ぐっと中へと押し込んだ。  擦られ、抉じ開けられていく感覚は、ぞわりとした痺れと共に、快感を生む。  撮影中、オレが上から尻が潰れるほど、腰を打ちつければ、大体のネコは反射的に孔を締めつけ、脳がイク。  次から次へと与えられる快感が怖いネコの逃げようとする身体を押さえつけ、更なる深みへと落とし込めば、考えるコトを止めた脳は、快感の底へと沈む。  ほんの少し腰を引き、勢いをつけ、未開の場所を抉じ開ける。  暴かれたコトのない場所に到達したオレのペニスは、歓迎されるように絡みつかれ、揉みくちゃに可愛がられる。  それはきっと、犯されている方もそれほどまでに気持ちが良いというコトだ。  玩具にオレの動きを模写させ、少しずつ奥を暴いていく。 「ん………ぁ、…あ………」  ずるりと引き出した玩具を、ずぶずぶと飲み込ませ、奥を穿つ。  肉欲に塗れたオレは、天原の存在を忘れるほどに、快感に溺れていた。 「ひぅっ………」  急に背中に感じた振動に、思いも寄らない声が零れた。  くっと首を捻り、横目で確認した先には、ピンクローターのコードを摘まむ天原の指先があった。  震えるその本体が、オレの背に触れたのだ。 「いっつも思ってたんだけど、お前の背中って色っぽいよな……」  画面に映るオレの背中を、震える玩具が絶妙な距離を保ち、擽っていく。 「ぁ、く……、ん…っ」  逃げられない訳でもないのに、オレは天原の攻めを甘んじて受け入れ、身体を捩らせる。

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