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第42話 付けて来た人
”双子、双子、双子なんだ〜
何でも2倍……
ミルクもオムツもプ〜の量も……
プフフ……何だかてんてこ舞いな陽向の顔が見えるや〜
羨ましいな〜
僕の “ジュン君“ は一体どこに居るんだろう?
でも顔がにやけちゃう……”
ふと目に入ったショップのウィンドウに
自分のニヤニヤとする顔が映し出されている事に気付いた。
“ヤバイ、ヤバイ、こんな顔して歩き回ってたら
只の変態な外人だよな……”
そう思って自分の髪に触れた。
“何故僕は日本人として産まれなかったんだろう……
何故 ”ジュン君“ のお隣さんじゃ無かったんだろう。
この金色の髪も、青い目も、白い肌も……”
そう思った時、視界の隅に入った人影が、
サッと隠れる様にビルの間に入った。
“えっ?”
そう思って振り向いたけど、
怪しい様な人物は見当たらなかった。
“もしかしてカブちゃんが言ってたボディーガード?
どうしよう? このまま知らんぷりしていた方がいい?!”
進行方向を向くと、
全神経を自分の背後に集中させて僕はまた歩き出した。
別に静かで真っ暗な真夜中に
誰かがヒタヒタと後をついて来るわけでは無いのに、
そんな感じで明らかに誰かが僕の後をついて来る感覚がする。
いや、もしかしたら気のせいかもしれない。
僕はトムやカブちゃんのように
攻撃や防御の訓練を受けたわけじゃ無い。
誰かが後をつけていていても、
絶対気付かない様な一般人だ。
でも一度疑ってしまうと、
後ろから歩いてくる人達皆が
僕の後を付けてきているような感覚に陥る。
僕はまた大きなウィンドウのあるショップに差し掛かった時、
ウィンドウに映る背後の人達に気を配った。
“間違いない!
誰か僕の後を付けてきている!”
僕がウィンドウに顔を向けたのと同時に、
又人影がサッと隠れたようにビルの隙間に入るのを見た。
僕は何も考えずに慌ててそのショップに入った。
「いらっしゃいませ〜」
と元気良く挨拶する若い女の子の店員が
ニコニコとして僕の方を見ていた。
僕が余りにも酷い顔をしていたのか、
「ソーリー、私、イングリッシュ分かりません〜
日本語分かりますか?」
そう心配そうに僕の顔を覗き込んできた。
でも、彼女の言っている事が全然耳に入ってこない。
僕は店内をキョロキョロと見回した。
「あの……ジャパニーズ……オーケー?」
彼女は身振り手振りしながら、
「顔色悪いですよ?
大丈夫ですか?
ん〜英語で何て言うんだろう……?」
それでも頑張ってニコニコと僕に話しかけようとしてたので、
少し冷静さを取り戻した。
「すみません!
日本語大丈夫です!」
そう言うと、彼女はほーっとした様に肩を撫で下ろし、
「良かった〜
気分悪そうだったからどうしようと思っちゃって!
あの……本当に大丈夫ですか?
顔色悪い様ですよ?」
彼女が心配そうに僕の顔を覗き込むと、
「いえ、大丈夫です。
少し慌ててここに入ったので少し息が乱れただけで……
顔色は色が白いからよく間違われるんです。
お気遣い有難うございます」
そう言って丁寧にお辞儀をすると、
「何だ〜 そっか、色白いですもんね。
私、九州出身で小さい時から日焼けしてたから地黒で羨ましいです。
ホワイトニングすごく頑張ってるんですけど!」
そう言って彼女はお茶目に舌を出した。
「今日は何かお買い物ですか?
妹さんか彼女さんへのプレゼントとか?」
そう言われて辺りを見渡した時、
初めて僕は、自分がファンシー・ショップへ飛び込んだんだと気付いた。
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