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2-6 過去の因縁 ※ 動物用媚薬・催眠
リシェールを巻き込めないため僕は光弾を放ち、リシェールと彼に密着している男以外を跳ばした。
「何……っ!?お前は……。この力…まさかっ…!」
ワイバーンから飛び降りて、ワイバーンを遠くへ飛ばす。
魔法を使う時に障害になったら困るからね。
「リシェールを解放してください!」
男は何か動揺して僕に視線を遣ると、笑い出す。
「金色の瞳…そういう事か……成程、『貴方』の方だ。」
何か彼の中で合点がいったらしく、楽しそうに笑っている。
「あの、リシェールを…。」
「返すとも、貴方が身代わりになるなら。」
あれ、この人リシェールに求婚してたんじゃなかったっけ?
そんな事より、リシェールを早く手当てしてあげたい。
「私を憶えてないのかい、ねえ、リシェール・ファルセア・シュゼ・ルキウス王子様?」
「…っ!」
僕をそう呼ぶのは多分前世の、何だか嫌な感じがする…。
不意に男が手枷を投げて来る。
「それで自分の手を戒めてくれるかな。そうしたらこの子は無事に返してあげると約束する。名に誓ってもいいよ?」
「っ!?」
思い出した…これって『魔封じの戒め』。
この人……前世で僕を凌辱した貴族!
「……貴方はアレク様に殺されたんじゃ……。」
僕は死んでしまったので、アレク様に聞いただけの話だったけど、何故生きてるのか。
「光の化身である貴方を害したとして罰を受けた私の魂は、死んで冥界に送られた。そこで私は冥界の神に気に入られてね。私の貴方に対する想いを喜んで貰えて。こうして冥界神の遣いとして人間以上の力を持ってこの世に戻ったんだよ。今度こそ貴方を手に入れるために!」
「事情はわかりました。どうしてリシェールをそんな目に合わせるんですか?」
頭の奥で頭痛がする。
「貴方がこの世界に居なかったからだよ、リシェール王子。それで似た彼を、光を感じて貴方と錯覚した。そうそう、貴方を求めるこの子とシンクロした部分もあってね。」
この男が僕を呼んでいた…そこに国を滅ぼされて力を求めたリシェールの意識と混じって…。
「ほら、転移先をこの城の中にしてあるだろう?」
転移の魔法が展開されて、リシェールを包む。
敢えて転移先が僕に見えるようにする事で交換条件を飲ませようとしているんだろう。
仕方無く僕は両手に魔封じの戒めで自分の両手を一纏めにする。
と同時にリシェールの姿が男の元から消えた。
間違いなく城の中に送られたのを最後まで見取った。
そして男が近付いて来る。
「ようやく会えた、リシェール王子様。」
「…僕は貴方の名前も知りません。」
そういえば前世から一度も名前を聞いていない事実に今頃気付く。
男は少しだけ傷付いたような顔をする。
「ああ、名乗って無かったね。マクシミリアンですよ。」
「また凌辱するんですか?」
睨み付けて返事を待つ。
僕の何をどうしたいんだろうかこの人。
リシェールの事で腹が立っていたのかも知れない、自然に口調が強くなる。
「言ったでしょう、貴方を妻にする。」
「無理……んんっ!」
顎が掴まれて上を向かされ口が封じられて何かを流し込まれる。
飲まないように必死だったけど、舌で液を押し込まれながら鼻が摘ままれると苦しくて飲んでしまった。
「思い出すねぇ、あの時もこうして飲ませてあげたよね。」
また媚薬?
楽しそうに笑いながら、片手で僕の頬から首筋を撫でて、僕の服を脱がせていく。
「…どうして…僕を……。」
撫でる手に震えながら尋ねる。
「貴方は全然覚えてないのだね。
あれは私が10歳の頃だった。
ルキウス王国で開かれた第一王子の誕生パーティーに父と参加した私は、光輝いて見える少年…貴方に一目で心惹かれた。
当時私はこれでも闇属性の者を受け入れていたんだ。
闇属性の者と友達になる私は家族から虐げられていた。
そんな苦しみの前に、貴方と言う光が現れた。
貴方に挨拶をした時に、貴方は言った。」
「その歳でそのような志を持たれるなんて素晴らしいですね。
僕も家族には止められていますが、きっと差別を無くせる筈です。
貴方のような方が居るならば、きっと。」
「そう言って貴方は焦がれるような瞳で私を覗き込んでくれた。」
…えーと、言ったような覚えはあるけど、それから10年間一度もこの人と会った記憶が無い。
しかも再会の時、断罪されたショックで顔なんか大して見てなかった…。
「それは、忘れてしまった僕も悪いとは思いますけど……。」
「だからやり直しをしよう、今度こそ貴方を……。」
「あ…っ…あ!?何…これ……っ!」
肌を撫でられただけでイきそうになる。
首を振って快感を打ち消そうとするが全然収まらない。
熱くて堪らない。
身体に力が入らない。
くず折れた僕を腕で支え、マクシミリアンはそのまま草の絨毯に僕を倒す。
……人は居ないけど外だった。
「前回は失敗したよ、まさか自害されるとは。だから今回はそんな余裕を無くさせないとと思ってね、動物用の媚薬を与えさせてもらった。」
「…熱……っ…動物…!?」
何それ、聞いた事ないけど、キツイ!
まだ何もされてないのにイきそう。
「は……ぁ…っ…!」
もう相手が誰なのかもわからなくなって来る。
どうにかなりそうで目の前の男へ必死に視線を遣る。
「最初から……そうやって素直になってくれていれば…。」
マクシミリアンは下半身を脱ぎ去り、全裸にした僕に圧し掛かると、胸へと舌を這わせてくる。
ゆっくりとわざと一番感じる箇所を除くようにして。
「んんっ!胸…っ…いじって…っくださ…っ!」
「フッ…これでもう私の物だ。」
希望通り胸の弱い箇所を舐められる。
「ああ…っ…そこ…あああ――っ!」
胸を舐められただけでイってしまった。
なのにまだ奥が熱い。
射精した股間も、触られてもいない後ろもぐしょぐしょになっているのを感じる。
「ほら、もっとイっていいんだよ、何度でも。」
そう言って射精したばかりの僕自身を撫でる。
「んっ…あああ――っ!!」
それだけで再び達してしまう。
刺激が強過ぎて頭がおかしくなりそうで。
「そろそろ私も限界だよリシェール王子。」
硬くなったそこを僕の後ろ付近に押し当てながら、指を挿れて、既に僕の液体でぬるぬるになった後孔中を掻き回す。
「んあああっ…気持ち良過ぎて死んじゃう…っ!!」
目が虚ろになってくる。
でも疼いて意識が落とせない。
「中を私のモノで掻き回して欲しいだろう?」
「掻き回してっ…くださ……はやくっ!!」
答えてる間にもイってしまってる。
「じゃあほら、名前に誓って契約だよ。『私の物になります』って!言うまでこのままだ。」
指でしこりを何度も突かれる。
何度もイってわけがわからない。
でも……契約だけはしちゃいけないって、思考の隅にどうにかよぎる。
達しながらも契約を口にしないでいると、不愉快そうになるマクシミリアン。
「闇の皇子のせいだな。まだあいつを想っていたなんて……。」
何か呟くと僕に魔法を掛けて来る。
「こうなったら楽しみは後だ。契約を先に済ませる。リシェール王子、名に誓い私と結婚すると誓え!」
言われると頭では拒否しているのに口が勝手に開く。
「り…リシェは……。」
「催眠の魔法だよ。さあ、安心して唱えてご覧?」
優しい声が耳に入る、抵抗出来ない。
「リシェは……マクシミリアン様と結婚……。」
そこまで言った時に闇魔法に包まれて言葉が封じられる。
闇が晴れた後、視線を向けると。
「見つけた…リシェ…。」
「…アレク様……。」
契約が弾けた時に催眠も解けていた。
「結婚の契約に攻撃を受けた事で、ようやくこっちの世界に俺の魔力を感じられた。」
そう、僕とアレク様は『元の世界のゲームの中』で名を交わした結婚をしていた。
ゲームの世界が異世界と繋がってるから、それも影響したのかな?
ちゃんと契約の魔法が発動して、アレク様との契約を護ってくれたらしい。
闇魔法の契約で。
マクシミリアンの要求がそれに反したから、アレク様の闇魔法がこっちで発動した。
それを辿って……深く考えるのはよそう、アレク様は万能なんだ。
「私を殺した闇の皇子か!お前は邪魔だ!」
マクシミリアンがアレク様に魔力塊を放つ。
アレク様は光以外の全属性を展開して受け止めているが、今のアレク様は人間だから、神に力を借りてるマクシミリアンには押されてしまっている。
が、二重展開して更に僕に当てないように僕の戒めだけを壊す。
ウェルナート様の時に使っていた『魔力操作』だった。
ふと思った僕は契約を口にした。
「リシェはアレク様に光を譲渡します!」
少し驚いたようだったけど、すぐに微笑を浮かべてアレク様は察してくれた。
僕から光がアレク様に移る。
アレク様は展開していた他属性の魔力に光を注ぐ。
完全に全属性が揃った真っ白な魔力塊を、アレク様がマクシミリアンに放つ。
「うあああ――っっ!!こんなっっ!!!」
マクシミリアンは避ける事も弾く事も出来ず塊に飲まれて消えた……。
「リシェ、怪我は?」
「無いですけど……薬を盛られて足腰が立たなくて。」
色々な事が一気に起こったせいで少しだけ正気に戻れた感じだった。
アレク様に運んで貰い、城の中で横たえられたリシェールを回収し、ワイバーンを呼んでヨウタさんが居る宿まで運んで貰った。
アレク様に戻して貰った光魔法で二人へ治癒を掛けると、挨拶出来ないまま帰る事になった。
いつまでこっちと通路が繋がってるかわからないから。
「すぐ会えると思う。」
ってアレク様が言ったのでそれを信じて。
マクシミリアンは冥界に帰ったのかな…。
僕はサフィがどうなったのかという事を聞くのを忘れていた……。
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