34 / 67
2-8 繋がる世界
「ずりぃ!俺も混ぜてよーっ。」
後日、置いてきぼりを喰らった陽太さんが拗ねていた。
ここはルキウス城の玉座の間。
「柚希のあんな状態見せるとか有り得ないな。リシェールにだってだいぶ妥協したってのに。」
ここはゲーム…ネットの世界じゃないから本名で会話していた。
「だって、ウェルナートは俺のリシェール使ってんじゃん。」
「ウェルナートじゃなくてアレクな。」
「その……陽太さん、御免なさい、僕が……。」
「柚希は仕方無いって。リシェールを助けに行ってなった事だし。」
「…柚希、涼一さん、申し訳無い……。」
頭を下げるリシェールに首を振る。
「リシェールに助けて貰えたんだし。その、むしろリシェールはまた僕に巻き込まれたんじゃないのかって…。」
「ゲームに出てたバグがあいつだった。あのゲームの特異点から発生したんだろう。誰のせいでも無い。あいつの執念が起こした事だ。」
執念…でも僕に向けて来た好意は本当だったのかな……。
「あ、そういえば、サフィってどうなったの?確かリシェールはサフィに捕まったって聞いたけど。」
「……マクシミリアンに……。」
リシェールは答えた後唇を噛み締めていた。
「そ、そうだ。お詫びと、助けて貰ったお礼を兼ねて……!」
空気を変えようと思って僕は『祝福』の魔法を展開する。
白い魔力…『聖属性』なんて言われてたけど本当は光属性魔法。
魔法の種類で強く発光すると白い魔力になる。
これが聖属性魔法の正体だった。
祝福を掛けると土地の土壌が良くなり、何でも育つし収穫も早くなる。
こうすればその内人も集まって来ると思ったから。
それをルキウス国の土地一体に掛ける。
「…私では魔力が足らず出来ない、有難う柚希…。」
謝る事をやめてくれたリシェールが穏やかな表情で、お礼を言ってくれた。
「それで、そのゲームとこっちの世界が繋がってるんだ?でも俺の身体は死んでるから日本には行けないんだよねぇ?」
姉さんとアレク様で繋げたらしい…。
「あっちに本体が無いと無理だな。まあ、光の女神ファルセアの力で繋がったと思ってくれ。」
姉さんという事は言わず、アレク様はそういう事にしてくれた。
姉さんの話になったら面倒だしね。
「取り敢えずリシェールと陽太はこっちのゲーム世界に入る事は出来る……が。」
涼一さんはそこで言葉を一旦切る。
口にし辛い事なのかな?
「二人はゲームのキャラではないから、死んだら復活出来ない。」
「私達は元よりそういう世界で生きてきたので、大丈夫です。」
そんな事かとリシェールは安堵して言葉を吐き出す。
「それと…これは多分だが、俺と柚希も、異世界側で死んだら死ぬと思う。」
僕の『リシェ』と涼一さんの『アレク』はあくまでゲームのアバターだから、死んだって復活出来る。
逆に異世界ではアバターではなく本当の人間になるから、セーブ地点からの復活ではなく、正真正銘死んでしまうのだと。
「私達には何の支障も無いと言う事なら、ゲームの方に私達が伺うようにすれば問題は無い、ですよね?」
「その点はそれで問題無いが、こっちのゲームは成人向けでな。」
リシェールの言葉に涼一さんが足りてない情報を、リシェールから陽太さんに視線を投げる。
「俺オンライン版やる前に死んじゃったからさ、どういう状況なのか分からないんだよね。」
「アダルトのオンラインゲームと言ったら……。」
そこで涼一さんが転移の魔法で、四人をゲーム世界へ移動させた。
「……ああいう感じだ。」
涼一さんの言葉に目の前を見ると、複数のプレイヤーがあちこちでエッチしてる!
普段全く意識して見てなかったので、こんな状態だと気付なかった。
「柚希には俺が見せないようにしてる。柚希の姿も出来るだけプレイヤーに見せないようにもしてる。」
「俺だったら自慢して歩くけどなー。」
「危ないと思うぞそれは。」
楽観的な陽太さんの言葉に涼一さんは危機感を感じた様子で、一応助言する。
リシェールは首を傾げてる。
「大人に任せたらいいと思うよ。何かあったら陽太さんの責任って事で。」
「うーん…そうなっちゃうよね。わかった、涼一の言う通り俺もリシェールに気を配るようにする。」
そう言うと陽太さんはリシェールの頬にキスする。
リシェールは慣れているのか普通に受け入れてる。
僕なんか人前でされたら真っ赤になるんだろうな。
取り敢えずリシェールや陽太さんと会うのはゲームの世界側って事になった。
「良かった、リシェールにも陽太さんにもこれから普通に会えるんだ。」
僕は嬉しくて微笑んだ。
「…っ!」
「柚希、その顔反則…。」
リシェールが赤くなり、陽太さんも何となく赤い顔で呟く。
「…凄いだろ、柚希の魅了スキルは。」
涼一さんまで何か言うけど、スキルなんて使ってないのに…。
こうして、かえがえのない友人といつでも逢える僕は、変な経験もして来たけど、今は大満足だ。
異世界とゲームが繋いでくれた縁。
「涼一さん、有難う!」
嬉しくてリシェールと陽太さんに抱きつきながら、お礼を告げた。
穏やかな顔で僕の背中に片腕を回すリシェール。
僕の頭をコネコネする陽太さん。
満足気に笑みを浮かべる涼一さん。
その後はたまに異世界側に行って、ルキウスの復興を手伝ったり。
それからゲーム世界にリシェール達のアバターを作ることで、死んでも平気な身体で世界を動けるようになったらしい。
特にリシェールは異世界だけの存在だから、例の特異点を利用して召喚魔法を応用、こちらの現実世界に来られるようになった。
当然涼一さんがやってくれたのだけど。
僕は嬉しくて、リシェールを外に連れ出した。
リシェールからすると何もかもが珍しいようで、僕が説明する。
なんか役に立ってる気がして嬉しい。
「ねえねえ君達双子?洋服の撮影をしてるんだけど撮影に来ない?」
金髪紫瞳のリシェールは人目を惹き付けるもんね。
洋服くれるって言ってるし、貰った名刺と男の顔写真を涼一さんに写メしたら、本物だと連絡が来たので、リシェールに経験させてあげようと思って、男の人にOKした。
連れて行かれたスタジオで初めてとんでもない事がリシェールの口から明かされた。
「以前私が柚希になっていた時、柚希の姉君の美月さんから、金髪のウィッグと紫のコンタクトを装着させられて、写真を撮影するという経験をした事があった。」
…姉さんはリシェールが訳がわかってないのをいいことに、僕の身体を勝手に使ってまたとんでもない事をしていたんだ。
リシェールコスプレを本人にさせるとか一体何処で何を……。
姉さんを問い質すのはあとあと、着替えないと…。
ああ、服貰っても普段着れないね。
着替えた服装は、リシェールが猫耳、僕がウサギ耳のメイド服だった。
撮影が終わると、心配してくれたのか涼一さんが外に迎えに来てくれていた。
ご飯を食べてからリシェールを城まで送って、涼一さんの家に行った。
ともだちにシェアしよう!