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EX3 秘めた想い
side:リシェール
私と柚希は日本では親戚という事になっている。
柚希とは瓜二つと言われるが、私の方が若干顔立ちがキツメだと思う。
柚希は見てて暖かくなるような穏やかな表情。
だからわりと見分けは付くと思う。
それに私は現在一房ほど後ろの毛を伸ばしている。
柚希は去年と変わっていない。
それに…背は若干私の方が高い。
柚希は身長を気にしているので、その事は気付いても言わないでおく。
今日も日本で柚希が連れ出してくれた所は『メイド喫茶』という所だった。
成程、やたら働くのに向いていないヒラヒラしたメイド服で、甘ったるい接客をする店。
好きな者も居るだろうと、国での商業展開を少し考えたところで、柚希がしがみついてきた。
「うぅ……リシェール…ぅ…。目が……回る…。」
「柚希どうし……。」
顔が赤く体温が高い。
熱かと思ったが、柚希の隣に座っていた男がどうやら気軽に自分のアルコールを柚希に飲ませたらしい。
男へ射殺す視線を向けてから、柚希を支え店の外に出る。
涼一さんに事情を連絡して迎えを呼ぶ。
待っている間公園のベンチに腰を降ろさせて隣に座り、柚希を凭れ掛けさせた。
額に手をやるとやはり体温が高い。
「解毒と治癒……。」
こちらには魔素が殆ど無いので、魔法はほんの僅かしか使えない。
だから……。
「ん……。」
柚希に口付けて口移しで魔素を流す。
殆ど光は見えないほどだが、確かに流れているのが分かる。
「ん……気持ちいい……。」
「ゆず……き…?」
柚希がうっすら笑みを浮かべる。
私は必要無いのに柚希の舌を舐めてしまい、そこでどうにか解放した。
そう私は柚希が好きだ。
私を助けてくれた。
そして今も、本物の兄弟のように接してくれている。
柚希は涼一さんしか見ていないのもわかっている。
それに柚希も兄弟として接しているのがわかるから、この想いは気付かれてはならない。
一応私には陽太という恋人も居る。
陽太は私の気持ちを知ってて関係を続けてくれている。
詳細は口にしないが、彼も過去に柚希と何かあったらしく、「リシェールの次に好きなんだよね。」と口にした。
少し落ち着いたらしく柚希は寝てしまい、五分ぐらいして涼一さんが現れた。
涼一さんは、眠る柚希を抱きかかえると、タクシーまで誘導してくれる。
「一応解毒と治癒はしてみました。」
「…有難う。」
報告すると物言いた気な視線を向けてくる。
恐らく涼一さんは私の気持ちを知っている。
知っていて何も言わないのは、柚希に知られたくないからだと思う。
「まあ、何と言うか…これからも大変だな。」
こういう事がまた無いとは言い切れないという事には同意して頷いた。
柚希を大切そうに抱える涼一さん。
嫉妬などは起こらない。
多分諦めている部分があるのだろう。
「ん……りしぇーる、大丈夫?」
一瞬、薄く目を開けた柚希が私の方へ視線を遣り小さく問い掛ける。
連れ出した責任を感じているのだろう。
こうやっていつも私を気遣ってくれた。
辛い時も笑顔を向けて「大丈夫だ。」と言ってくれた。
切なくなる。
私は今どんな表情で柚希を見ているのか…。
涼一さんが
「リシェールは平気だから。」
と柚希の頭を撫でて寝かし付けていた。
涼一さんと目が合う前に、私は車の外を眺めた。
「りょういちさん、ありがとう…。」
柚希の声が甘ったるくなる。
豹変した涼一さんが柚希に激しいキスをする。
窓に映っていたが、気付かない振りをして軽い苦笑を浮かべてしまった。
柚希の提案で後日入浴施設に行く事になった。
人は居ない貸し切りで。
色々と国の商売の参考になると眺めていると、
「満足出来たら入ろうね。」
と、私が仕事モードになっているのに気付いて黙って見ていてくれた事を知る。
…いつも私を見ていてくれている。
色々な風呂に入り、最後に……サウナに入る。
最初はこんなに熱い場所に入る意味がわからなかった。
慣れてくると少しだけ良さがわかってくる。
「僕はサウナって結構苦手なんだ。」
まだ子供だねーと同意を求めて来る柚希を振り返ると…。
思わず口許を押さえてしまった。
汗まみれで身体を赤く火照らせて、空気が薄いせいか息が荒い。
過去に柚希の中に入った事を思い出してしまう。
持っていたペットボトルの水を飲んで身体を落ち着かせる。
と、柚希がじーっと水を見てくる。
「持って来なかった…。」
柚希も喉が乾いているらしい。
危機感が全く無いのは私に安心しきっているのか。
そういえば涼一さんがよく
「誘われてるのかわからない。」
とぼやいていたのを耳にした事がある。
これなんだなと実感してしまった。
「柚希…。」
私は水を口に含むと、柚希を引き寄せて口移しで水を柚希に送る。
「ふ……。」
こくりと水を飲む柚希。
唇を離してドキドキしながら柚希の反応を待つ。
「リシェール…熱い……。」
「柚希っ!?」
そのまま倒れ込んで来る柚希を支えた。
外に連れ出し、冷たいおしぼりを頭に乗せて、柚希を扇いで連絡した涼一さんを待つ。
私一人でもどうにかなるが、連絡しないで知られた時が怖い気がした。
洋服は着せてある。
涼一さんは到着すると
「お前も大変だな。」
と言って来たので
「お互い様です。」
と返した。
多分涼一さんも私も柚希に振り回されるのが楽しいのだろう。
柚希の気が済むまででいいから、私はこんな関係を続けて行きたい、と望んでしまっていたのだった。
LAST EPISODE END
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