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第11話 愉悦*

「あっ……ぁ……」  中で(うごめ)く指をきゅうっと締め付けながら、腰を前後に振ってしまう。  こんな卑猥な体勢と動きを見られたくなんてないのに、どうしても我慢できなかった。 「どう? つらい?」 「大丈夫……っ」  首を横に振って、甘い声で返事をする。  中の粘膜がぐちゅぐちゅとこすられ、首筋を唇ですわれ、さらにはツンと尖っている乳首を指先で押しつぶされると、冷静な判断なんてできない。  短く熱い息を吐きながら、津波のように押し寄せる快感に酔いしれた。  指がさらに奥へと進み、折り曲げられた時にビリッと電流が体全体を駆け抜ける。  今日1番の快感。  指を抜き差しされながら奥の箇所に触れられると、信じられないくらいに気持ちが良かった。 「あ、あ……それ……っ!」  触れられていない欲望の先端からは先走りが(したた)り、白いシーツに染み込んでいく。 「気持ちいい?」 「ん……っ」 「良かった」  もう十分なのに、しつこく責められる。  これ以上されたら変になる。  体をくねらせて訴えても、指は抜けない。  もうそこは(やわ)らいで、受け入れる準備ができている。   「もう……いい、から……っ」  して、と潤んだ瞳で懇願したのと、指を引き抜かれたのは同時で、その後すぐに指とは違いすぎるものが押し当てられた。  うつ伏せになった俺のうしろに、足立はゆっくりと腰を押し進めた。  開かされた感覚がおおきくなり、中の粘膜を擦り上げながら奥に入ってくるそれに、息をのむ。  入った、と頭の中で呟くと、胸がジンとして涙が滲んだ。  俺と同じように足立も、はぁっと吐息を漏らすのがすぐそばで聞こえて、ますます胸が痛くなる。  ギュッとシーツを握りしめることで、その痛みに耐えた。 「大丈夫? 史緒」 「うん。全部、入った……?」 「まだ半分くらいだけど、負担掛けたくないから。今日はこれくらいで」  遠慮がちに言われる。  気遣ってくれてるのはすごく嬉しいけど、なんだか物足りない。  ちゃんと奥まで、挿れてほしい。 「大丈夫だから……して、いいよ」  安心させる為に、へにゃっと笑ってみせる。  泣き笑いのような顔の俺を見た足立は瞠目して、眉根を寄せた。 「どうしてそんなに、可愛いんだろう」  言いながら、さっき俺の首筋につけた赤い痕に噛み付くようなキスをする。   「史緒が好きすぎて、どうにかなっちゃいそう」 「あ……っ」  体重をかけられ、それを奥まで挿れられた。  馴染むまでじっと耐えたあと、埋めていたものを引き抜かれ、また奥まで突き立てられる。  抽挿を繰り返されている間、内側の敏感な箇所に何度も触れて、目の前に星が飛んだ。   「あっ、あ──……!」  粘度のある音が、部屋いっぱいに響く。  体とシーツの間に挟まれた性器もぐちゃぐちゃに擦られて、中のものをきつく締め付けてしまう。  自分の体がこんなに淫らだとは知らなかった。  足立も息を乱しながら、腰を押し付けた。 「史緒。大好きだよ、史緒」  抱きしめられたまま、小さく、時に大きく律動を繰り返されてふるりと体が震える。  俺も足立が好きで、大好きで。  このまま溶けて1つになってしまってもいい。 「俺も……っ、だい、すき……っ」  口元は緩み、息をするのも、ままならない。まるで媚薬を飲まされたみたいに体が(たかぶ)る。  涙の雫を弾けさせながら、何度も告白をしていると、また前立腺にそれが届いた。  その瞬間、俺はどうしようもなく達していた。  身体を硬直させると、生暖かいものがじわりと下半身に広がる。  その後、体の奥に熱い迸りを感じた。  足立も俺の中で達したのが分かった。  弛緩した足立は俺の背中に覆いかぶさってくる。 「お、重い……」 「もう少し、もたせたかったのに……史緒が可愛いこと言うから」  名残惜しそうに、手を重ねてきた。  指と指を絡ませ、やさしく握ってくれる。  俺も握り返しながら、少し汗ばむ手の甲にキスをした。 「少し休んだら、また……しよう」 「本気で言ってる?」 「だって今、足立の顔、見れなかったから……」 「俺も同じこと考えてた」    たくさんキスをしてからもう1度、互いの体を触れ合った。  今度はちゃんと、向き合いながらした。  イく瞬間の表情を見られるのは、かなり恥ずかしかったけど。  こちらも、息を乱す足立を間近で見れたので良しとする。  これからもっと、足立を好きになる。  体も心も、誰よりも近い存在になった人と、ちゃんと幸せになろうと決意した夜、窓の向こうでは、優しい雪が降り続けていた。

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