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第10話
「社長、お迎えに上がりやした」
スキンヘッドが、うやうやしく頭を下げる。氷室は、彼を小突いた。
「遅えぞ」
「すんません!」
「まあいい。すぐに帰るぞ。それから、こいつも連れて行く」
腕を捕まれて、優真は身がすくむのを感じた。スキンヘッドは、優真を見て意味ありげに笑っている。
「へらへらすんじゃねえ」
もう一度怒鳴りつけると、氷室は優真を後部座席に押し込んだ。すぐに彼も隣に乗り込み、車が発進する。その時、優真のスマホが震えた。『ヒロシ』からのメッセ―ジだった。
『すみません、電車が遅れて、今喫茶店に着きました。どこにいますか?』
(遅いんだよ!)
すでに狼に捕まった兎は、半泣きで頭を垂れたのだった。
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