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第4話

 イライラしながら昼食を済ませると、優真は職場を出た。生活保護受給者の家庭訪問である。生活状況を把握するため、定期的に自宅を訪れて調査するのだ。  とはいえ頭の中は、まだ氷室のことでいっぱいだった。騒音から徹底的に守ろうとしてくれているのは、わかる。体だけが目的なら、わざわざアパートを買い取る必要は無いのだから。とはいえ、勝手に実行されたことには、やはり納得できなかった。 (舎弟さんたちには悪いけど、こっそり撒いて、今夜はアパートへ戻ろうかな……)  密かにそう考えながら駅へ向かって歩いていた時、優真はふと、見覚えのある男を見かけた。 病気を理由に生活保護を受けている、二十代の若者だ。だが近隣住民からは、連日パチンコ店通いをしていると通報を受けている。まさかと思ったが、目の前の若者は、確かに元気な様子ですたすた歩いていた。どうやら向かう先は、駅前のパチンコ店のようだ。 (許せないな)  カッとなった優真は、若者を追った。 「あの」  声をかけながら、店に入ろうとする彼の前に回り込む。 「あ? 何だ、てめえは。どけよ」 「私は、社会福祉事務所の者ですが」  とたんに、若者の顔色が変わる。 「ご病気で働けない、と仰ってましたよね?パチンコができるくらいお元気なら、扶助を受ける必要は無いのでは?」 「パチンコするわけじゃねえよ。ここで、ダチと待ち合わせてんだ」  見え透いた言い訳である。おまけに、すごむようににらみつけてきた。それでも優真は、勇気を出して若者に語りかけた。 「毎日通われてるのは、わかってるんです。いいですか、世の中には、働きたくても病気で働けない人だっているんですよ。あなたのように健康な人が援助を受けたら、その分、本当に困っている人に行き渡らなくなります。その辺りを、よく考えていただいて……」 「うっせえな。偉そうに説教しやがって!」  若者が、舌打ちする。その時、優真ははっとした。似たような年格好の若者二人が、店から出て来ると、近寄ってきたのだ。 「タケ。こいつ、何?」 「役所の奴だよ」  タケと呼ばれた若者が、吐き捨てるように答える。 「ナマポ(生活保護)のことで、因縁付けてきやがった。税金泥棒のくせによ」 「へえ。面白えじゃん」  二人の顔に、残忍そうな笑みが浮かぶ。 「ちょっと顔貸せよ」 まずい、と思った時には遅かった。二人の若者は、両脇から優真の腕をつかんだのだ。そのまま、店の裏へと連れ込もうとする。

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