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第6話
「あの、どうしてそこに山下さんが出てくるんですか? 彼、東郷組と何か関係が?」
「ええ?」
今度は城が、目を見開いた。
「まさか知らなかったんすか? 山下は、東郷組に使われてる半グレっすよ。兄貴は、山下やそのツレが立花さんに仕返しに来るのを警戒してたんす」
優真は、唖然とした。ちなみに兄貴というのは、氷室のことである。
「でも、立花さんには内緒にしてたんすね……。すんません」
城は、ばつの悪そうな表情を浮かべている。優真もまた、罪悪感を覚えた。アパートから山下を追い出したのは、そのためか。彼は警察に行かない、と断言していたのも納得だ。暴力団関係者なら、確かに警察には頼らないだろう。
(それなのに、僕は徹司さんを非難してしまった……)
「山下絡みじゃなかったんすか? じゃあ、何で揉めてたんすか?」
城が、不思議そうな顔をする。経緯を説明すると、彼は納得したように頷いた。
「東郷組は、マジで厄介な連中ですからねえ。よそのシマは荒らす、カタギさんも傷つける。そして資金源は、生活保護の不正受給。現役の組員は生活保護を受けられないから、ああいう半グレに申請させるんすよ。うちの組とは、犬猿の仲っす」
何となく、わかる気がした。氷室は自分の稼業について、一切語らない。それでも、昔ながらの任侠道を遵守するポリシーらしいことは、薄々感じていた。東郷組とは、さぞかし相容れないに違いない。
「しっかし、立花さんの仕事も結構危険なんすねえ。お守りできてよかったっすよ」
城は、深刻そうな声を上げた。
「ま、安心しててください。俺たち、こうして昼間も陰ながら護衛してますから」
「あ、ありがとうございます!」
優真は、深々と頭を下げた。こんな風に、こっそり見守られていたとは思わなかった。氷室の気配りに、優真はしみじみ感謝したのだった。
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