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第7話

 結局優真はその日、氷室の元へ帰ることにした。彼の配慮も知らず、反抗的な態度を取ったことを謝りたかったのだ。  いつもの通り舎弟たちに迎えられ、車に乗り込む。いかにもな黒塗りではなく、比較的カジュアルな車だ。目立ちたくないという優真の気持ちに、氷室は気づいていたようだった。 「お勤めご苦労さんでした」  舎弟たちは口々に労ってくれたが、城は不在だった。どうしたのだろうと思いつつ、氷室の事務所兼自宅まで送り届けられる。ビル内に入ると、優真は彼らに頼んでみた。 「事務所の方へ通してくれませんか? 徹司さんに話したいことがあるんです」  早く詫びたかったのだが、舎弟たちは渋った。 「いや、それは社長に禁じられてますんで。三階まで、お送りします」  押し問答していたその時、優真はびくっとした。事務所内から突如、怒号が聞こえてきたのだ。 「お前の目は節穴か? 馬鹿野郎が。何のために、護衛に付けたと思ってる!」  氷室の声だった。 (もしかして、昼間の話……?)  思わず優真は、舎弟たちの制止を振り切り、中へ飛び込んでいた。 (やっぱり)  部屋の中央では、氷室が仁王立ちになっていた。最初に出会った、頬に傷のある男も一緒だ。向坂(さきさか)といい、若頭だという。そして予想通りその前では、城と昼間の五人が、土下座させられていた。 「おい、優真……」  氷室が目を見張る。優真は、彼を見すえた。 「昼間の件ですよね? どうして責めるんです? 彼らは僕を助けてくれたんですよ?」 「未然に防げねえんじゃ、意味ねえだろうが。……おい、特に城!」  氷室は城をにらみつけると、その頭を足で蹴り飛ばした。 「お前が付いていながら、何だこのザマは!」

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