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第6話

「――ええ!? まさか。そんなの邪推ですよ。そりゃ確かに、徹司さんは東郷組の不正受給者情報を、僕の職場に流してくれましたけど。それは純粋に、不正受給を無くしたいという僕の思いに共感してくれたからで……」  優真は度肝を抜かれたが、城は大真面目だった。 「でも奴らは、完全にそう信じ込んでます。兄貴が今手こずってるのは、そのせいなんすよ。もう、一触即発って感じ。さっきの商店街で大規模抗争、なんてことになったらやべえなって、俺も不安すよ」  そんなに危険な状況なのか、と優真はぞっとした。真っ昼間に狙撃されたばかりだけに、信憑性が高い。関係無い人々が危険にさらされると思うと、耐え難かった。それも、自分の職業が原因で。 (一時的に、徹司さんから距離を置いた方がいいのかな……) 「あ、立花さん、すんません」  優真の深刻な表情に気づいたのか、城はあわてたように言った。 「怖がらせちゃいましたよね。大丈夫っすよ。東郷組については、桐生会きりゅうかいさんも業を煮やしてて。今回うちと手を組んで、一緒にあいつらを排除してくれることになったんす」 「――へえ、そうなんですか?」  優真は、少し驚いた。桐生会というのはやはり指定暴力団だが、月城組とはライバル関係にある。手を組むだなんて、意外だった。 「よく、協力なんてしてくれましたね」  優真は単純に感心したが、城はなぜか口ごもった。 「ああ……、まあ、そうっすね……」  何だか、歯切れが悪い。優真は怪訝に思った。 「あの、何かあるんですか?」 「いやいや、立花さんは知る必要無いっすよ」  そう言われると、よけい気になる。優真は、城を見すえた。 「本当のことを言ってくれませんか? 今さら僕、何を聞いても怖がりませんから。それに、城さんが話したとは言いませんし」 「まあ、そこまで言うなら……」  城は、渋々といった様子で話し始めた。 「実はね、桐生会さん、うちと手を結ぶにあたって条件を提示したんすよ。……あちらの幹部のお嬢さんと、うちの兄貴の結婚す」 (――結婚!?)  優真は、絶句した。城が、バツの悪そうな顔をする。 「……まあその、お嬢さんが兄貴に夢中なもんで。あっ、でも、まだ先の話っすよ?」  先とはいえ、手を組むことになったということは、結婚は決定事項ではないのか。氷室は何も言わないが、それは彼の優しさだろう。 (つまりもう、彼とは終わり……?)  いくら何でも、妻を娶りながら優真を部屋に住まわせることはしないだろう。さっきは一時的に距離を置くことも考えたが、まさか永久に離れることになるとは思わなかった。優真は、込み上げる涙を必死にこらえたのだった。

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