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第4話

 社会福祉事務所に出勤すると、優真は人気の無い場所で、カードに書かれていた消費者金融の番号に電話した。 『本日ですか? はい、大丈夫ですよ。どうぞお越しください』  電話に出た男性は愛想良く、ひとまず優真は安心した。おまけに幸いにも、予約は簡単に取れそうだ。優真は、三十分後に行くと告げた。仕事が終わった後では、また舎弟たちが迎えに来てしまうからである。  その上で、体調不良と偽り、早退を申し出る。よほど深刻そうな顔をしていたのか、課長はあっさり許可してくれた。  念のため裏口から職場を出ると、優真は真っ直ぐ商店街に向かった。やがて到着したビルは、地味な外観の建物だった。入ってみると、店内もまた殺風景で、シンプルなブースが立ち並んでいる。 「予約していた立花と申しますが……」 「いらっしゃいませ、お待ちしておりました」  名乗ると、先ほど電話に出た従業員が出迎えてくれた。すぐに、個別ブースに通される。プライバシー保護は形ばかりで、別のブースからは、他の客らの相談が聞こえてきた。客は数人おり、優真の隣にいたのは、資金繰りに困った自営業者らしかった。  指示に従い、免許証を見せ、数点の質問に答える。借入の目的は、知人への借金返済だと説明した。あれこれ聞かれることを恐れていたが、聞き取りは意外にもあっさり終了した。 「では審査に入りますので、しばらくお待ちください」  従業員がブースを出て行く。手持ち無沙汰に待たされていた、その時だった。店内で、叫び声が上がった。 「何だお前は!」  先ほどの男性従業員の声だった。次の瞬間、バーンという耳をつんざくような音がする。そして辺り一面に、白煙が広がった。同時に、足首に焼けるような痛みを覚え、優真はその場にうずくまった。 (何……?)  おそるおそる目を開けると、一緒にいた客や従業員らも、同じように横たわっていた。ひどく血を流している者もいる。ブースの壁や椅子、机は軒並みなぎ倒され、焼け焦げていた。窓は割れ、ガラス片がそこここに飛び散っている。どうやら、爆発が起きたようだ。

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