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第5話

「何事だ!」  その時、派手なスーツに身を固めた四、五人の男が、ドスドスと上階から駆け降りてきた。一様に、銃を手にしている。 「月城組だな。なめた真似しやがって!」 (月城組……!?)  え、と思った次の瞬間、白煙漂う店内に、五、六人の男が乱入してきた。優真は、息をのんだ。見覚えのある、月城組の若い組員たちだったのだ。彼らもまた、銃を手にしている。 「俺らをコケにするからだよ、東郷組さんよ?」 言うなり彼らは、銃を乱射し始めた。店内にいた男たちも、一斉に応戦を始める。突如始まった銃撃戦に、優真と客たちは言葉を失った。 (真っ昼間の商店街で、こんな……)  この店は、東郷組の経営だったというのか。それで月城組が、襲撃を仕掛けたということか。だが、何だか腑に落ちない。こんな乱暴な手段を氷室が選ぶとは、思えなかった。 「わぁっ……」  優真の近くにいた客の一人が、不意にうずくまる。どうやら、流れ弾に当たったようだ。優真は、とっさに彼を抱え起こした。逃げなければと思うが、出口付近に近づくのは危険だ。 (一体、どうすれば……) その時、ひときわ鋭い声が響いた。  「てめえら、何やってる! 勝手な真似しやがって!」 優真は、はっとした。店の入り口に、向坂以下数十名の組員を従えた氷室が、仁王立ちになっていたのだ。すさまじい形相である。 「しゃ……、社長? だって、ここへカチコミ(殴り込み)かけるんじゃ? 城の兄貴が、そう……」  月城組のメンバーらは、銃撃を止め、当惑した様子で氷室を見上げている。東郷組の方も、組長以下大勢の出現に、怖じ気づいた気配だった。早くも逃げ場を探そうとする者もいたが、すでに店の裏口にも、月城組の組員たちが回っていた。 (どういうことだ? これは城さんが、勝手に指示したこと……?)

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