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第6話

 呆然としている優真のそばへ、舎弟らが駆け寄って来た。 「立花さん、お怪我は?」 「僕より、他の人たちを先に」  優真は、爆発や流れ弾で負傷した客たちを示した。舎弟らは心得たとばかりに、彼らに手を貸すと、外へ連れ出し始めた。 一方氷室は、店を襲った組員らに詰め寄っている。 「俺がそんな命令下すと思うか、馬鹿野郎が。カタギさんまで傷つけやがって、ただで済むと思うなよ!」  氷室は彼らの銃を奪い取り、その角で次々と頭をぶん殴った。 「す、すいませんでした……」  組員らは向坂に首根っこをつかまれ、外へと連れ出されて行く。氷室は、東郷組の男たちの方を向き直った。彼が一歩ずいと近づいただけで、彼らがたじろぐのがわかった。 「おい、てめえら、よく聞け。月城組と桐生会は、この度連合を結成した。そしててめえら東郷組のカシラは、俺たちの傘下に入ることで、話は付いた」 (――そうだったんだ)  負傷者たちに手を貸しながら、優真は思わず聞き入っていた。 「……だが、その中にてめえら一派は入っていない。なぜだかわかるか? てめえら、吸い上げ(上納金)をちょろまかしてたらしいなあ? つまりな、てめえらはカシラに見捨てられたんだよ」  その時、パトカーのサイレンが近づいてきた。異変に気づいた周囲の店が、通報したのだろう。東郷組の男たちは、焦ったように顔を見合わせた。 「てめえらはこの商店街で違法営業を繰り返し、カタギに迷惑をかけた。店を閉めろという俺たちの警告も無視した。極道の風上にも置けねえてめえらがパクられようが、俺の知ったこっちゃない。……だがよ」  氷室は、裏口を封鎖していた舎弟らに合図を送った。彼らが、さっと道を空ける。 「今回のやり方は、俺らの方がまちがっていた。こいつらが勝手にをやりおった事だが、俺の監督不行き届きだ。……だから、これでチャラだ」  言外に逃げろと目で合図され、東郷組のメンバーは、先を争うように裏口から逃げて行った。

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