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第7話

 氷室はそこで初めて、優真の方を見た。 「俺たちも早く行くぞ。手当をしないと」 「はい、でもこれは一体……」  なぜ氷室らは、タイミング良く駆けつけたのか。それにまるで、優真がここへ来ているのを知っていたかのようだった。 「話は後だ」  うながされ、必死に歩こうとするが、足首の火傷のせいでままならない。氷室は、そんな優真を抱き上げると、走って裏口へと向かった。他の舎弟らも、一斉に続く。外にはすでに、何台もの車が待ち構えていた。 「横にした方がいいでしょう」  優真の足の怪我を見て、向坂が言う。氷室は、後部座席に優真を寝かせた。 「社長はこちらへ」  向坂が氷室に向かって、別の車を示す。一瞬彼らの注意がそれた、その時だった。優真はふと、視界の端で何かが光るのに気づいた。数メートル先の草むらの陰に、銃口が見えるではないか。明らかに、こちらへ向けられている。  優真は、目を疑った。銃を手にしていたのは、城だったのだ。 (嘘だろ……!?)  とっさに身を起こし、ドアを閉めようとしたが、遅かった。パアンという銃声が響く。優真は、思わず目をつぶった。しかししばらく経っても、予想した衝撃は訪れない。おそるおそる目を開けて、優真は息をのんだ。  氷室が優真を守るように、ドアの前に立ちふさがっていたのだ。その肩からは、大量の血が流れ出していた。  

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