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第6話

「そんな……」  優真は、言葉を失った。薄々そんな気がしないでもなかったが、改めて聞かされると、背筋が寒くなる。 「もっともその時は、本気で()ろうとは思っていなかったようだ。脅しをかけ、あれこれ吹き込んで、お前が自主的に出て行くよう仕組んだらしい。だがその後、俺がこのマンションを購入したことを知って、カッとなったようだ」 「――それで、殺そうと……?」  ああ、と氷室は苦々しげに頷いた。 「城は、俺とお前の会話を立ち聞きして解決料の件を知り、お前が金策に走ることを予想した。そして、消費者金融のカードを忍び込ませたんだ。……あの店は、東郷組がケツ持ちしてるヤミ金だったんだよ。狙い通り、お前は来店の予約をした。東郷組と通じていたあいつは、連中からお前の来店時刻を聞きだし、それに合わせて店を襲撃させたんだ。そしてそのドサクサで、お前を消そうとした。だが俺が現れたことで予定が狂い、自らお前を狙った、というわけだ」  氷室は、深いため息をついた。 「俺は、自分に腹が立って仕方ねえ。城がクサイってのには、早くから気づいてたのにな。あいつには毎回イロの護衛を任せてきたが、あんなヘマは初めてだ。だからお前の護衛から外して、目を離さねえようにしてたのに……」 「え? そうだったんですか」  優真は目を見張った。東郷組とやり合うのに、人手が要るからではなかったのか。 (コロンの移り香がするほど、長時間一緒にいたのは、監視目的……)  優真は、見当違いな嫉妬をしていた自分が恥ずかしくなった。 「徹司さん。自分を責めないでください」  まだ頭を垂れている氷室の手を、優真はぎゅっと握った。 「ああして、助けに来てくれたじゃないですか。……でもどうして、城さんの計画がわかったんです?」 「マサだよ」  氷室はあっさり答えた。  「その前日、お前、昼間がどうの、と漏らしていただろう。気になってマサを問い詰めたら、奴はドリップコーヒーを出してきて、城の企みを洗いざらい白状した。狙撃のこと、カチコミ計画のこと……。マサはな、借金で首が回らなくなっていたんだ。それを肩代わりしてやるから、代わりに協力しろと言われ、城に片棒を担がされていた。でも、車の中でお前と話して、良心の呵責に耐えかねたらしい。お前がいかに俺を想っているかがわかった、と言っていた。……まあそんなわけで、俺はすぐに店に駆けつけた、というわけだ」

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