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EX 1月14日 マンリーデー

side:柚希 「柚希、帰ろう、すぐに!」 終礼が鳴ったとほぼ同時に僕のクラスに涼一さんが現れて急かす。 「どうしたの?…わっ!?」 クラスメイトが注目する中で抱き抱えられる。 恥ずかしくてパニックを起こす僕を宥めるようにしながら涼一さんを押してさっさと廊下に出すリシェール。 すぐに寮へと走り出す涼一さん。 僕を抱えてるのにリシェ―ルと同じ速度で走ってる……凄い。 喋ると舌を噛むので黙っていた。 部屋について僕をベッドに降ろしてくれた。 「要件を言ってから行動しろっ!」 リシェールが息を切らしながら怒鳴る。 「急いでいたんでな。今日は大事な日だったのを昨日知って、慌てて用意したわけだ。」 息が切れてない涼一さん……。 「大事な日?」 何かあったっけと記憶を辿るけど特にそんな記憶…。 「今日はマンリーデーと言って、バレンタインより先に男らしく告白する日って要約だが。通常だとバレンタインが先だろ?それを待たずに男から先に、って日だ。つまりホワイトデーは無し。」 「言われてみれば男から先の方が理に適っているな。」 バレンタインの仕組みを聞いて、リシェールが感想を漏らす。 「というわけで、柚希にはプレゼントを用意した。」 高そうな包みをくれる涼一さん。 「お返しが出来ないよ…。」 「プレゼントは金額では無い。恐らくそれが何百万の品でも、柚希のキス一つで涼一には元が取れるんだろう。」 「良くわかってるじゃないか、リシェ―ル。」 取り敢えず包みを開けると……中の箱を明けてからすぐに僕は蓋を閉じた。 「これしてたら体育絶対に出れないよ僕。」 中には僕でもわかる高価そうな宝石が付いた指輪がネックレス状になってる…多分付けやすいように指輪をネックレスにしてくれたんだろうけど、傷付けたらどうしよう。 僕の態度を怪訝に思ったリシェールが蓋を開けて確認すると、やはり閉めた。 「これは…所持にはハードルが高いだろう。」 リシェールも溜息混じりに言う。 「普段は部屋の金庫に入れておけばいい。一緒に居る時なんかに身に付けてくれれば。」 「うん、有難う。嬉しい!」 せっかくのプレゼントを渋るのもと思って、快く受け取った。 もう一度開けてみると、凄く綺麗に光ってる。 …これの対価がやっぱりキスだけは無いなー。 「あれ?そうすると僕はいつ返せば…。」 「2月14日でいいんだぞ。」 「ホワイトデーに同時だと思ってた…。」 「柚希は奥さん…女の子役だからバレンタインにくれればいいんだ。」 何かに気付いたリシェールが立ち上がる。 「すぐに戻る!」 言うと走り去ってしまった。 「それでどうして急いでたの?」 「プレゼントで終わりじゃないだろう、こういう日は。レストランを予約してあるからな。その前に柚希の服を買う時間もあるし。」 予定をぼんやり聞いてると、取り敢えずまずは服を買いに行くらしい事が決まったので、制服から普段着に着替えた。 涼一さんは予定をメモしてリシェールに残していた。 早ければどっかで合流するんだろう。 服屋ですっごい時間が掛かって(涼一さんが決め兼ねてた)、レストランに着くとすでにリシェールが居た。 どれだけ待ったんだろう…予約時間には間に合ったけど、他に行く所全部変更になっちゃったし。 珍しくいつもと比べるとそんなに高そうでもないレストランだった。(僕的には十分高いけど) 何でも金額を抜きにして口コミ評価が高い店なんだって。 でも席は個室だった。 リシェールがすぐに席を立って僕にケースをくれる。 「んと、バングルだっけ?」 開けてみると細い腕輪が入っていた。 素材は気にしない事にした。 付けてみると疲れが癒えるような感じ。 涼一さんが、その手があったか…と少し悔しそうだった。 「有難うリシェ―ル。これ用意しに行ってくれたんだ?」 「急ごしらえなので…。」 うん、凄く疲労が見える…平気かな? 「取り敢えず食べて、少しでも疲労回復してね。」 エビチリを箸で掴んでリシェールの口に差し出すと、美味しそうに食べてくれた。 ガタッと音がして席を立つ涼一さん……うん、わかった。 麻婆豆腐を箸で同じく掴んで涼一さんの口に差し出した。 結局自分も食べたけど二人に食べさせる時間の方が長かったな。 疲労が酷いリシェールは先に帰った……明日もう一回お礼を言おう。 「うわー、綺麗だね!」 今は涼一さんとイルミネーションを見てる。 僕を抱き寄せてくれてるけど、暗いからあんまり見えないよね、きっと。 「あの、今日は本当に有難う。あまり大した物返せそうに無いけど、僕なりに頑張るから…。」 「今日服のお返しを貰うぞ?服のプレゼントってのは脱がす為にするらしいからな?」 「っ…!」 暗闇だから見えないと思うけど、僕は赤くなっている。 多分見えなくても涼一さんはわかってるに違いない。 「じゃあ、食事の回収を…。」 冗談めかして言うと、唇にキスを落として来た。 割と人が居るのに! 涼一さんはすぐにコートを広げて僕を包みながら唇を食んで離す。 僕の赤くなった顔を見つめると「帰ろう。」と手を繋いでくれた。 「涼一さんと居ると手袋が要らないね。あったかい。」 言ってから結構恥ずかしい事を言ったなーなんて思ってたら、いきなり暗がりに引きずり込まれて、激しいキスをされた…。 「んっ…!人……来たら……っ!」 慌てる僕の前をはだけさせて、首から掛けてるさっき貰ったネックレスを引き出してしまう涼一さん。 「これ、婚約指輪だからな?」 そうか、それ込みだったんだ。 すぐに胸元に仕舞ってくれて、前も整えてくれた。 「本当は今日は寝かしたくないんだけどな…。」 「後一日の辛抱だよ。」 クスッと笑って言うと、頬にキスしてくれた。 涼一さんの温かい手と、腕に付けたリシェールからの贈り物のお陰で、寮に着く頃には多分涼一さんより元気になっていた。 リシェールが心配だったので一応隣の部屋に行って様子を見たら寝ていたので、起こさないようにそっと額に触れると、顔色は回復した様子だったので、安心して部屋に戻った。 涼一さんにその事を告げるとすぐにベッドに引き摺り込まれた。 「残念だが明日は早いからな…。」 僕を抱き締めたまま唸る涼一さん。 やっぱり疲労を少し感じる。 今日だって仕事とか学校の事とか片付けてから僕の所に来たんだろうし。 「…たまには僕が涼一さんの事寝かし付けるのもありだよね?」 そう言うと涼一さんは凄く嬉しそうな顔をした。 僕を潰さないように僕を横にずらしたので、涼一さんの背中に腕を回すと、背中を叩いて寝かし付けてみる。 涼一さんが僕を寝かし付ける時にやってくれる。 本当に疲れていたようで、数分で寝てしまった。 僕もつられるようにウトウトとして、すぐに眠りに落ちてしまった。

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