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第10話

その後、オレは妖怪の姿のチロ先輩とそのフードの奴を連れて繋先輩との待ち合わせ場所に行き、トゥンナイさんに乗せてもらって全員で家に帰っていた。 「……で、そいつは何者なんだよ?」 居間に集まり、食卓テーブルを挟んでチロ先輩とフードの奴、繋先輩とオレのペアで並んで向かい合って話をし始める。 オレは電気ポットでお湯を沸かし、こないだ母親からもらったハーブティーを用意して全員に配った。 「この人はねぇ、ボクが結婚したい人だよ。ルーちゃんっていうんだ」 「は?結婚したいって……」 「ボク、お腹にルーちゃんの赤ちゃんがいるんだよね」 「はぁ!?」 俯いて顔を上げないフードの奴に腕を絡めながら話すチロ先輩。 その笑顔がオレは怖かった。 「赤ちゃんがいるって……お前いつの間に何やってんだよ!父さんには話したのか?」 「ううん、まだ。まずは繋と雅美くんに報告しようと思ってたから」 繋先輩、突然の告白に驚いているみたいだ。 オレも結構びっくりしてるけど。 「ルーちゃんとはねぇ、ガッコウで出逢ったんだ。ボクのコト好きになってくれたからすっごく嬉しかった。それで見つからないようにガッコウで妖怪の姿になっていっぱい交尾してたらね……」 「チロ、もういいからお前少し黙ってろ!俺はそっちからも話を聞きたい。……あの、そういう訳なんで顔出してもらえないですか……?」 「……OK……」 先輩が促すと、そいつはようやく被っていたフードを脱いだ。 パーマのかかった茶色の長い髪と切れ長の緑色の瞳。 色白の肌をした、女にも見える顔立ち。 「Nice to meet you.I’mルシフェル。schoolでは小早川総デス」 「……やっぱり人間じゃなかったんだ……」 ルシフェルと名乗ったその人に繋先輩は言った。 それからルシフェルさんは神の息のかかった天使に愛する人を奪われた事により堕天使になり、放浪の旅に出て日本にたどり着いた事、その中で人間を騙す事に快感を覚えてしまい優しい教員のフリをしてターゲットを漁ろうとしていたけど、選んだチロ先輩が妖怪で正体がバレた事、チロ先輩を妊娠させるつもりはなかったのに目の前の欲求に負けて妊娠させてしまった事を英語と日本語の混ざった言葉で話した。 「……それ、ちゃんと避妊すれば済んだ話じゃないですか……」 話を聞いた繋先輩は大きくため息をついてから言った。 「それで、 これからどうするつもりなんですか?チロは結婚したいって言ってますけど」 「わ、私は……」 「繋、ここで一緒に暮らしちゃダメ?ボクが育児で傍にいられない時はルーちゃんが代わりに繋と雅美くんの事、護るからさぁ……」 ルシフェルさんが話そうとすると、チロ先輩がそれを遮るように言う。 「ボクね、繋と雅美くんが仲良く幸せそうなのを見ていたらね、結婚っていいなぁって思っちゃったんだ。そんな時にルーちゃんと出逢っちゃって、最初は嘘だったと思うけどすごく優しくしてもらって……」 「チロ……」 チロ先輩は見た事のない、穏やかなんだけど悲しそうに見える顔をした。 「繋、本当にごめんなさい。でも、ボク……せっかくボクのところに来てくれた赤ちゃんを諦めたくないんだ……」 「ワ……私カラモplease、お願いシマス。Actually、私にトッテチヒロはハジメはtargetデシタ。but、チヒロは私のheartを温めてくれマシタ。今ハ本当にチヒロを愛してイマス。forever、ずっとチヒロの傍二いたいデス」 「ルーちゃん……!!」 目の前で抱き合うふたり。 オレはそんなふたりを困った顔をして見ている繋先輩を見ていた。

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