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第11話

その後、繋先輩がチロ先輩とルシフェルさんをお義父さまの所へ連れて行って結婚を認めてもらい、ルシフェルさんはチロ先輩と家で暮らす事になった。 お腹が目立ってきたチロ先輩は学校に通わなくなり、ルシフェルさんがチロ先輩以上に繋先輩やオレに気を遣ってくれた。 「大丈夫すか」 「うん、ありがとう、雅美くん。ごめんね」 「いえ……」 お腹が大きくなったチロ先輩は身体を動かすのも大変そうで、オレは休みの日、繋先輩とルシフェルさんがお義父さまの仕事を手伝いに行っている時に部活の後だけど先輩たちの部屋の掃除を手伝ったりしていた。 「雅美くんが今のボクと同じになった時はボクがお手伝いするからね」 「…………」 チロ先輩にそう言われて、こないだ母親経由でおじに言われた言葉を思い出してしまった。 『まだ子供が出来ないなんて、一体何のために嫁いだのか』 おじとしては、いや、松若の家としては、嫁いだからにはすぐに鬼様……繋先輩との子を産むのが筋だと言いたいんだと思う。 オレも、結婚した時は考えられなかったけど、今はちゃんとそう言われても仕方ないって理解してる。 「雅美くん」 「はい?」 「いいんだよ、焦らなくて。赤ちゃんは自分からやって来るから」 オレが窓ガラスを拭いていると、チロ先輩が笑顔で話してきた。 「周りになんて言われてもいいじゃない。繋とふたりで決めたとおりにしていけばそれでいいんだよ」 「…………」 それは、繋先輩も言ってくれた。 『雅美くん、今すぐ子供を作らなきゃって思わなくていいよ。俺、君が望まないうちはそのつもりないし、高校はちゃんと卒業して欲しいから』 いつもオレを大事にしてくれてる繋先輩。 このままずっと先輩とふたりきりでいたい。 そう思いながらも、大好きな先輩と一緒に先輩との子供を育ててみたい気持ちもある。 ただ、怖い。 男のオレが母親になれるのか。 そして、ちゃんと跡取りを産めるのか。 「大丈夫、ボクでも妊娠したんだから。それにね……」 オレが不安そうな顔をしたのか、椅子に座っていたチロ先輩が笑いながらオレの傍に来て耳元で囁く。 『ナカに出してもらうの、すっごく気持ちいいんだよ』 「!!!」 背筋がぞっとするような艶っぽい声で言われて、オレは息を呑んだ。 「……掃除終わったんで飯の支度しに行きます……」 それからさっさと窓拭きを終わらせると、オレは足早にチロ先輩の部屋から出ていた。

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