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「生きてる」
その時。はっと、気付いた。
……この人達って、ちゃんと、生きてるのかな?
生きてるように見えるけど……ご飯も食べてて、酒も飲んでるけど……生きてるのかな。
急に怖くなってしまった。
生きてるように見せかけて、実はやっぱりゲームのキャラクターだから、心臓は動いてない、とか……?
想像したらゾッとした。
すぐ隣で、オレの顎に触れてるルカの、手首に触れてみた。
脈……脈って、どこ?? なんかよく分かんない。
「おい、何――――……」
「ごめん、確認、させて?」
ルカの首の上の方、片手で少し力を入れて触れると。
どく、どく、と動いてた。
「あ。 ……生きてる」
良かった。ああ、良かった。
めちゃくちゃホッとして、はー、と息をつく。
生きてなくて動いてたら――――……すげー、怖いもん。
はー、良かった。
……ていうか、そうなってくると、逆に不思議に思えてくる。
…………生きてるんだ……。
まあとにかく、生きてて、息もしてて、飲み食いもして――――……。
オレと同じ、人間……てこと、だよね?
「生きてるってなんだよ。つーか……首触んな。殺すぞ」
低い声で、唸るみたいに言われて、ぱ、と手を引いて、強張る。
「――――……っっっご、めんなさ……」
この世界、首触ると、殺されるのか……!
後ずさって、逃げようとすると。
キースが笑った。
「急所に触れるなって事だから。殺さないから大丈夫だよ」
あ。そういう事。 そっか、首、急所……。そう言ってくれればいいのに。
ほんと、怖いし……。
まだ怯えてるオレを、ルカはじっと見つめて。
「……お前もとりあえず食えよ」
そう言われて。目の前に置いてある食べ物を、じっと見つめる。
「はい、フォーク」
「あ、ありがとう」
キースがフォークを差し出してくれる。
あ、フォークはあるんだ。
……箸は無いのかな。……無いか。
カタカナ名前の世界だもんね。和食とか、無さそうだもんな。
と自分でも良く分からない納得の仕方をしつつ。
いまいち何の料理か分からないもののオンパレードだったけど、恐る恐る口に入れてみると。
「――――……」
あれ、意外と、美味しいかも。
なんか、優しい味。
おばあちゃの煮物、みたいな?
何か、色は茶色いものが多くて、なんか同じ物に見えるけど。
あと、緑色のものは、きっと何かの葉っぱ系な物がそのまま出てるのかなと思うけど。
……この世界は、色どりとかは考えないのかな。
……考えないか、ゲームの世界だもんな。
色鮮やかなのは、なんか変わった形と色の、果物っぽいものだけ。
どんな味なのか想像できなくて、手が伸びないけど。
そんな事を考えながら、正直何なのか全然分からない、数種類の食べ物を、もぐもぐ食べていると。段々お腹いっぱいになってきた。
ていうか、正直、頭と胸がいっぱいで、食欲がないし……。
「ごちそうさま」
と手を合わせた。
「美味しかった?」
リアがクスクス笑う。
うん、意外と、美味しかった。そう思いながら、ただ、頷くと。
「美味しいなーて顔してたよ。素直ー。ほんと、ソラ、可愛いわね」
「何だよ、やっぱ気に入ってんのか? ソラのこと」
ゴウの声。
「だから違うわよ。弟みたいな? 可愛いってそういう意味……」
「ソラ」
リアが言ってる言葉を急に遮って、ルカがオレを呼んだ。
「……?」
「お前、オレのものになれよ」
「――――……?」
……ルカの、もの??
どういうこと??
1人の人間として生きてきて。
誰かのものになれ、とか。
正直、初めて言われた。
……どーいう意味???
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