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「泣かなければ?」

    「…………ん、ん……」  こんなにだるかった事、無い。そう思う位、だるくて。  何とか、目を開けて。ぼんやり、していたら。 「――――……目ぇ、さめたか?」  すぐ近くから――――……ルカの、声。 「……ルカ――――……」  腕の中に、居たんだ、オレ。  ……道理で、あったかいなと思った。 「もー……夜だけとか……にしてくんない?」 「あ?――――ああ、そういうことか。……無理」  無理って。  …………オレの方が、無理なんだけど。  絶対、どう考えたって、オレの方が、ダメージあると思うんですけど。  ルカが無理とか、言わないで欲しいんですけど。 「……だって、昨日そのまま寝て、起きて、ご飯食べたらそのままで、また……オレ、昨日と今日って、それしかしてない気がする」 「――――……毎日そんな事はしねえから」  くす、と笑って、よしよし、と頭を撫でられる。  そうやって、時たま、優しいんだよな。  でもきっとこれ、動物を撫でるとか、それ系の意味しかない気がするしな……。 「ていうか……何でさっき、急にあんな事に……」 「ああ。……まずいの飲んで、泣いてるの見たら、その気になったっつーか」 「――――……」  あぁ、オレ、絶対ルカの前で、涙浮かべるのやめよう。  どんなにクソまずい物を飲んでも食べても、泣かないで耐えよう。  誓いながら、そういえば、昨日変なこと言ってたなーと、後ろのルカを振り返る。 「ていうかさ。あのさ……ほんとに、魔王のとこで半泣きしてたオレ見て、た……勃ちそうに、なったの……?」  正直、情けないしかないんだけど。  …………でもなー。オレの世界の人達は、あれを間近で見て平気で笑ってられる人は居ないと思うんだよね。魔物自体居ないのにさ。魔王は、強そうだしでかいし、怖いし、絶対、皆泣くと思う。  半泣きで留めた自分をほめてあげたい位だし。 「ん? ああ。――――……まあちょっと語弊があるな。さすがに、あの場でそんな気分になった訳ではねえんだけど」 「――――……」 「泣いてる顔見た時、急に気に入ったのは、間違いないな」  ……ルカって、じゃあ、オレが泣いてなければ、オレには興味ない?  じゃあ、泣かなきゃいいのでは。  ていうか、オレ、当たり前だけど、普段泣かないから。  魔王が怖すぎたのと、ルカも怖かったし。なんか昨日はちょこちょこ泣きそうになったけど。  中学位から、ほぼ泣いて無いし。 「オレ、泣かなければ、オレにそんな気にならない?」  ウキウキしながら、そう聞いたら。  じっとオレを見つめたルカは。ニヤっと笑って。何かと思ったら。  背を枕に沈められて、顎を捕らえられて、急に、深くキスされる。 「……っん? ……んん、ん? ……っ」  意味が分からなくて、思わず、引き離そうと藻掻いた手首を掴まれて、顔の横で括られる。 「や――――……」  首を振って、離れようと思ったら、手首は軽々片手で、頭の上に括られて。  顎を押さえられて、深い深い、キス。 「……んんっ……」  手、全然動かせない。  この馬鹿力……! 「……ふ……っ」  離された時には、完全に息が上がって、もう、涙が滲んで。  なんか悔しくて、き、と睨む。 「なんなん、だよ!! もう!」  ぱ、と手を離されたけど、ぐい、と引き寄せられて、仰向けになったルカの上に、抱き込まれた。  顔に手を掛けられて、まっすぐ正面から見つめられ、涙を拭われた。 「――――……そうやってすぐ泣くの分かってるから。泣かないとか、前提、無くねえ?」 「…………っ」  お前のキスが、きつすぎんだよ! もう……!!!! この変態勇者!!!!  うわーん、もう、ほんと、こいつ、嫌だー!!!  何とも言えない気持ちに、また本気で泣きそうになってしまう。

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