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「だから、デリカシー……」

   着慣れない服を着て、足元スースーしながら、階段をルカと一緒に下りて行くと、昨日食事をした店に、3人が立っていた。 「あれ、ソラも行くの?」  リアが微笑む。頷くと。くす、と笑われた。 「ルカ、激しすぎだよね? 体、平気?」 「――――……っ」 「お前の声、ずーっと聞こえてたからなあ。なんかムラムラして、酒場に繰り出したわ」  ゴウが笑いながら言う。  ……ふー。ほんとにさ。どーなの……。 「あたし早々に、聞こえないように結界張って寝ちゃったから。ほとんど聞いて無いから安心してね」  リアが言うけど。  安心って……。 「大丈夫だった? 絶対初めてなんだからって最初に言っといたのにね」  キースも、涼しい顔して、触れられたくないとこに、突っ込んでくる。 「まあでも、悲鳴とか叫び声だったら、やめさせに行ったんだけどさ。オレも結界張ったから、そこらへんだけ確認して、寝ちゃった」  ……悲鳴とか叫び声だったら、やめさせに行ったけど。  …………来なかったってことは。 「気持ちよさそうな喘ぎ声だったから来なかったんだろ?」  まるで普通の事のように、ルカが答えた。 「オレが抱いてて、そんな訳ねーだろーが」  3人は、はーやだやだ、という顔をして、ルカを見やる。  …………っっこ、こういう話って。  こんなに大勢で、店のど真ん中で、結構大きい声で、普通にするもの……?  ……な訳あるかー!!  何なんだ、この世界。  性関係に、デリカシーってものは、ないのか???   それとも、この人たちに、無いのか?  わーん、こんなのが、勇者御一行様、なんてー!!  そんな馬鹿な―!!  清廉潔白な勇者像は、どこ行ったー!  ……っても、そもそもこのドS勇者に、そんなものは求めてはいなかったけど。  そもそも、セクシーでエロいって、女子達が泣いて喜んでたんだし。そういうキャラなんだよな。でもゲームの世界ではそんなこと……??    …………いやいや、もう、何考えてんだか、自分でも全然分かんない。  今すぐ、日本に帰りたいよう……。  オレから、返答する気力をすべて奪い取った、デリカシーのない方達は、全然気にせず、行き先の相談を始めてる。   「どこから行く?」 「さっきは南に行ったから、西か?」 「あ。オレさっき気になる事聞いたんだった。東の町の外に、結構強い魔物が出てて被害が出てるって」 「じゃあそっち、先に行こうぜ」  ルカの一言で、行き先が決まった。  リアの周りがまた光って、周囲に居たオレ達を包み込む。  ふわ、と軽くなって。  目を開けたら、もう違う町の外にいた。 「うわ……」  2度目だけど。  すごいよー!!   あ、日本に帰るの、もう少し先でもいいかも。とりあえず町巡りしたい。  まわりを見回しながら、ものすごく上がった気持ちに、ワクワクしていると。  リアがまた、おかしそうに笑った。 「可愛いんだけど、ソラ」  よしよし、と撫でられる。 「もう、魔力が続く限り、移動魔法使ってあげたいわー」  そんな風に言われる。  え。いいの? それは楽しすぎる……。  ウキウキしてると。横でゴウが、笑い出した。 「リア、移動魔法嫌いだろうが。いっつも、疲れる疲れる言うじゃんか」  ゴウのセリフに、リアは、分かってないなー、とため息を吐いた。 「あんたたち連れて飛ぶの、結構魔力も使うし、疲れるのよ。しかも運んでもらって当然みたいな感じだし? でも、ソラ、こんなに楽しそうにしてくれると、滅茶苦茶可愛いし。 それに、ソラとあたしだけなら、軽いからそんなに疲れないし」  リアが、くす、と笑って、オレを見つめてくる。 「今度2人で色んなとこ行こっか。綺麗なとことか連れていってあげるよ」  わーほんとに?  めちゃくちゃ嬉しい。  しかもこんな綺麗な人と。  と思った瞬間。 「ダメ」  ぐい、と引かれて、ルカの腕の中に収まる。 「行くならオレも行く」 「やあよ! ルカが居たら、重いのよ」 「じゃあその話は無し」  思い切り、バッサリと切られて、オレは、逆らう気力も無くなった。  

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