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「自分からキス」※

    「オレにキスして? 女にキスしてたみたいに」  ルカの言葉に、ほんとに嫌になる。     女にしてたみたいに、キス。  それを。ルカに、すんの? オレが?  ――――……ルカがしてるみたいには、してない。  あんな激しいキス、した事がない。……なんか、バカにされそうで、やだし。  人にしてたキスを、それを思い出しながら、別の人に。しかも男にとか、無い。     こんな面白そうな顔してる奴の、言いなりになって、何でそんな恥ずかしい事しなきゃいけないんだ、って思うし。    ――――……もう、どんな意味でも、嫌だ。したくない。  そう思うのに。 「早く、しろよ?」  クス、と笑われて。まっすぐ見つめられると。  なんだか、しなくてはいけないような気がしてくる。  それでも。  女の子にするみたいに、にしては。体勢がおかしい。組み敷かれながら、とか、無い。 「……女の子にするのに、こんな形でした事、無い」 「ふうん……」  ニヤッと笑ったルカが、オレを抱き締めたまま位置を変えた。  つまり、ルカが枕に背を沈めて、オレが上。  手首を持たれて、ルカの顔の脇に、両手をつかされる。  だから。ルカを、上から囲ってる感じ。 「――――……っ」  なんか、これ、恥ずかし過ぎるんだけど……っ。  顔に熱が集まるのが分かる。 「何、そんな顔赤くすんの?」  クス、と笑って、ルカがオレの頬に触れる。 「女より、照れるよな、お前」 「――――……っ」 「反応がそんなんだから――――…… 誰かと経験あると、思わなかった」  それは、絶対、オレが男だからだと思うけど……っ。  男なのに。  男に好きなようにされて。 でもって、気持ちよすぎたり、恥ずかしかったり。  なんか、自分がおかしくて。  なんか納得いかない部分もいっぱいあって。  もう混乱状態の赤面だし……っっ!!  女の子とする時、赤面した記憶なんか、無い。  ――――……もうオレ、耐えられないんだけど。この体勢。  心底そう思うのに。 「――――……キスしろよ?」  頬に触れてる手の、親指が、オレの唇をなぞると。なんだか、ドキ、と胸が音を立てる。 「……いやだ」 「――――……何で?」 「女の子にしてたみたいに、ルカにするとか……そんなの、嫌だ」 「――――……」  面白そうに、瞳を細めて。 かと思ったら、親指が口の中に少し入ってきて。  舌に、そっと触れた。 「……っ」  ぞく、としたものが、腰に走る。  ぎゅ、と瞳を閉じたら。ルカが、ふ、と笑った。 「じゃあ、女にしてたみたいに、じゃなくてさ」 「――――……?」  なくて、何だろうと瞳を開けて、視線が絡んだ瞬間。  ルカはくす、と優しく笑った。 「オレだけにするキス、して」 「――――……ルカだけに……?」 「オレに、どんなキス、したい?」 「――――……っ」  ただでさえ、エロいって世間で評判の声が。  濡れてるみたいに、甘く、響く。 「しろよ、キス」 「――――……っ」  何かもう――――……良く分からないけど。  何でだか、キスしたくて、たまらなくなって。  下から見上げてくる、偉そうな、年下の、訳わかんない、勇者に。  引き寄せられるように、近付いて。  唇を、合わせた。 「――――……」  ルカは、何もしてこない。受けてるだけ。  もう恐る恐るだけど。ゆっくりと舌を入れて、絡める。  女の子にとか、ルカにとか、区別する事なく。  オレは、こんな風に、優しくするキスが、やっぱり好き。  息が出来ないとか、そんな激しいのじゃなくて。  柔らかく触れて、舌、優しく絡めて、甘く、噛んだり――――……。  ルカは、オレに合わせてくれてるのか、激しくしてくることはなくて。  オレがするように、受けてくれてる、みたい。  昨日から、めちゃくちゃいっぱいキスされてるけど。  初めて、ルカと、優しいキスをしたような気がする。     

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