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「信じられない」

   これってさ。  ……登山、て言うの?  これは、さー。  崖を上るっていうかさー。  岩を上るっていうかさー。そう言って欲しいんだよね。  登山道ってのが、全然ないんだもん。    「登山」って言葉の概念、皆、間違ってるよ。  リアも頑張ってるから、なるべく、弱音は吐かないようにとは思ったんだけど。  登り始めて、かなり経って。  ――――……皆は、登りながらも、出てくる魔物と戦ってた。  オレはその間は、ルカの後ろで守られてるだけで、全然何もしてないし。  ……ていうか、出来ないし。  皆が戦いながら登ってるのに、ただ、くっついて登ってるだけのオレが、休むとか言ったらだめかなと思っていた、のだけど。  もう限界。  もう少しできっと、山頂なんだと思うんだけど、ここからもっと、険しそう。  そこに入る前に、ここで休ませてほしい……。  はあ、と息を吐いて、岩みたいなのに、座り込んだ。 「っごめん。少し、休ませて……」  振り返った皆に、しっかりしろよと、怒られるかなと思った。  けれど。  皆、なんか笑顔で。  あれ? と思ったら。 「よく頑張ったなー、ここまで。もっと早く音ぇ上げるかと思った」  ゴウが水を飲みながら、また別の岩に腰かけて、笑った。 「オレも。 山を見て、青ざめてたから、すぐダウンするかと思ったけど」  キースもクスクス笑いながら、岩壁に寄りかかった。 「ソラがめっちゃ頑張ってるから、あたしも頑張っちゃったよー、ほんとはもっと前に休憩したかったんだけど」  リアもそんな風に言いながら、よしよし頑張ったね、とオレを撫でてくる。  ――――……皆、優しい……。  は。ルカは? と、オレのすぐそばに立ってるルカを見上げると。  ぷ、とオレを見下ろして。 「まあここまでよく頑張ったな?」  と言ってくれた。  おお。皆、やさし――――……。 「どこまで頑張れるか、皆で賭けてたんだよなー」  喜びを遮ってルカが言った言葉に、首を傾げる。  ――――……ん?  今、何と?  賭けてた? 「はい。オレの勝ちな」  ルカがすごく嬉しそうにそう言って、皆から金を巻き上げている。 「……何してんの、一体……」  がっくりうなだれていると。 「この金、お前にやるから、好きなもん買いな」  クスクス笑うルカが、オレの隣に座って、ポシェットにお金を詰め込んでくる。 「……ルカ、何に賭けたの?」 「まあ、結構上の方まで頑張るんじゃねーかなって」 「なにそのアバウトな賭け方……」 「だってこいつら3人、登り始めてすぐ泣きごと言い出すって賭けてたから」  なんですと。  皆、オレの事、何だと……。  キッと、3人に視線を向けると、皆、超苦笑いしながら、素知らぬ方向を見ている。 「……ルカは、登るって思ったの?」 「ん? あーまあ。……他の奴が言わない限り、頑張るかなとは思った」 「――――……」  あれれ。  なんか、ちょっと嬉しいぞ、ルカの評価。  と、ちょっとぴりほんわかしていたら。 「まあ、戦いん時、何もしてねーしな? 言えねーかなって思ったって方が正しいかな」  ニヤニヤ笑いながら、そんな事を言われて。  一気に、気分は下降。  ……く。  喜ぶんじゃなかった。  オレに、あんな魔物たちと、戦える訳ないじゃんか。ちくしょー……。

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