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「頑張る」

  「ソラ、何か食わせろよ」 「え。ああ、うん。何が良い?」 「何でも」  ルカに言われて、ポシェットを開ける。  出発前に、ルカに、詰め込み過ぎと笑われながら、いっぱいにしてきたお菓子たち。 「じゃあこれあげる」  ちょっとお腹の足しになりそうな、クッキーもどきなお菓子を手に取ったら、あーんと開いたルカの口に、ぽん、と入れた。 「皆も食べる?」  聞くと、皆食べると言うので、手をお菓子の袋に入れかけて。  は、と気付いた。  食べさせたら、ダメなんだった。  気付いた瞬間、何でオレは、こんな事を気にしなければならないんだろうと、悩みつつ。 「取って?」  袋を皆に差し出して、自分で取ってもらう。  配り終えて、ルカの隣に戻って、岩に座った瞬間。ルカがニヤニヤ笑う。 「食べさせたらどーしてくれようかなーと思ってたのに」 「……っ」  ……良かった。食べさせなくて。  隣のルカをジト、と見つめると。ルカは、ぷ、と、笑った。  クッキーもどきを口に入れてみると。  なんとも言えない、ものすっごい甘い味で、すっごくぱさぱさしてる。  ……うーん。やっぱりこの世界、食にそこまで、情熱かけてないよなー。  まあ、食べれるし。  これ、カロリーとかは取れそうだし。そっち重視なのかな。  いやーでも、誰かー、  紅茶入れてー。  思った瞬間。 「ソラ、水」  ルカから、水のボトルが渡されて、ちょうどいいのでお菓子を流し込んだ。  いいタイミングで水渡してくれてありがとう。  なんて思ってると。    頬にルカの手がかかって、ぶに、と横に引っ張られた。   「ほんとお前、顔に出るな。あんまりそれ、好きじゃねえんだろ」 「う。……甘すぎて」  言うと、ルカはぷ、と笑いながら、オレの頬を離した。 「お前が作ったら、もっとうまいのか?」 「分かんない。ここの材料でどんな感じで作れるのか。早く作ってみたい」  なんかウズウズする。 「――――……楽しみだな」  くす、と笑って、ルカが言う。  ――――……昨日の夜。  ルカが、喜んでくれそうとか思って、ウキウキした自分を思い出して。  マジマジと、ルカを見つめてしまう。  あーなんか。    オレが作った物、美味しいって、喜んでくれたら。  やっぱり、オレ、ちょっと嬉しいかも……。  そんな事を思いながら、結構な高さから見る、この世界の景色を目に映していると。  なんか、ここが夢の中とかは、忘れてしまいそうになる。実際経験してる事だとしか、思えない。  だって、ほんとこの……山? 岩? 崖? のぼり、きっついし……。 「もう行けそうか?」  ルカがオレを見て、そう聞いてくる。  全然行きたくはないけど、頷いて、立ち上がった。 「この分だと、頂上まで登る事になりそうかな。ソラ、頑張れそう?」  キースが苦笑いしながら、オレを見てる。   「うん。頑張る」  出来たら帰りは、リアが魔法で帰ってくれると良いなあとか、密かに思いながら。また登り始めて、少し。  手が、ずる、と滑って。    うわ。落ち……。  思った瞬間。  下に居たルカに、容易く受け止められた。 「ル、カ……」  硬直。  抱き止められてる逞しすぎる腕に、心底ほっとしてしまう。   「……いつか落ちてくると思ってたけど、休憩開けかよ。 気合抜けすぎだ」  そんな風に言われて、ぷ、と笑われる。 「ごめん、あ、りがと……っつか、めっちゃ怖かった。下まで滑り落ちるのかと思った」 「んな訳ねーだろ。風の魔法で止めるし」 「……風の魔法で上まで運んでくれたらいいのに」 「今からデカいのと戦うのに、そんな魔力使ってられねえから」 「……登る体力は使っても良いの?」 「まあ。こっちのが楽」  そうなんだ。  魔力使うって疲れるんだ。  ルカにがっちり掴まれたまま、とりあえずルカが居た足場で話していたけど。  ありがと、登るね、と言って離れようとした瞬間。    ぐ、と掴まれて、顎、上げさせられて。 「――――……っ?」  キスされた。  何すんだ、こんな怖いとこでー!!  もう、絶対動けないし、逃げれない。  すっぽり抱き込まれてるし。 「……ん、んっっ」  今度は、優しくない、一瞬で深い激しい、キス。  ぎゅ、と瞳を閉じて、キスが終わるのを待つ。

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