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「もうしばらく」

   キスを、ゆっくり離されて。  じ、と見つめられる。 「…………っっ」 「行けるか?」 「…………っ逆、に、行けないよ!!」  なんか、フラフラしそうだっつーの!  もう!!!  笑ってるルカから離れて、悔しいから気合を入れて、登り出す。  離れてやる。ルカなんて、置いてってやるっっ。  どんどん登るけど、全然ルカとの距離は離れない。  ……まあそっか。 ルカは、軽々登ってるもんな。  ――――……あ。    そこで気づいた。  最初から後ろから、付いてきてくれてたのか。  オレ、遅いのに文句も言わず。  ……こういうとこは、優しいな。  落ちた瞬間、抱き止めてくれるし。  安心感、半端ないし。  …………まあ。ていっても。  無理無理連れてこられたの、ルカのせいだけど。 「……あのさあ、ルカ」 「んー?」  登りながら、すぐ下に居るルカを見下ろす。 「何でオレ、連れてきたの? 絶対足手まといじゃん」 「――――……今日帰らねえかもしんねーし」 「……そうなの?」 「見つからなかったりしたら、ありうる」 「うん。……それで??」 「オレが居ない間に、お前がどっか消えたら困る」 「――――……」  どっか消える。  ――――……元の世界に、戻る、とか? 「消えるにしても、目の前で消えたら、戻れたんだなって思えるから」 「――――……」 「それに、飛ぶ時光に包まれるなら、オレも一緒に包まれたら、一緒に行けるかもしれねえし」  ――――……ん??  振り返ると、面白そうにニヤニヤしてる。  んん?  ルカ、一緒にオレと、戻るつもりなの?  そういえば。  オレも急にどこかに飛ばされるとかあんのか、みたいな事を言ってたっけ。  ん? オレと一緒に飛ばされるつもりなの? 「…………ルカ、オレと、オレの世界に行きたいの?」 「ちょっと面白そうだろ。逆も」 「怖くないの?」 「……お前がこんなにのどかに生きてきた世界だろ? 怖くはねえな」  あ、なるほど。  …………って、なんかオレ、そんなに、のどか?   ……まあ、のどかか。  ここの人達に比べたら。  ルカが日本に――――……?  んー。  戸籍とかどーすんのって思うけど。  とりあえず、すごいモテそう。  モデルとか、いけちゃいそうだなあー……。すごい迫力あるし。 「とにかく、あんま離れんなよ。消えるなら、オレの目の前で消えろ」 「――――……どうして?」 「戻ったって分かる感じで消えるなら仕方ないだろ。お前はそっちのが幸せなんだろうし」 「――――……ルカが居ないとこで消えたらどうすんの?」 「さらわれた可能性とか捨てきれないなら、探すかもな」  ルカの言葉に。  …………なんか。  ……探して、くれるんだ。  オレが居なくなったら。      ほんの2晩一緒に過ごしただけで。  ――――……オレなんか、ここに居ても居なくても。  変わんないだろ、とか。  ちょっと、思うのだけど。  ……そうじゃ、ないのかな。ルカ。 「まあ。そんなんで連れてきたら、こんなに急な山だっつーのは誤算だったけど」  苦笑いでルカが隣に立って一歩先に上がると、オレの腕を引いて、持ち上げた。軽々持ち上げられてしまう。 「あり、がと……」 「ん」  なんか。  …………ルカの執着って。  良く分かんない。  ――――……分かんないけど。    なんか。  ……ここが何か分かんないけど。  もう、しばらく。  ……そばに居てもいいかな。なんて。思わされる。かも。      少し開けた所に立つと、先に登っていた3人が居る。  ルカの後について、3人の所に一緒に向かおうとした、瞬間。  ふわ、と突然、体が、浮いた。  

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