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「風で飛ぶ」

「下降りるぞ。あんなのそのまま落としとけねえから」  皆が頷いてる。  ルカが呪文を唱えた瞬間。  さっき、ルカがオレを助けてくれた時みたいな、ふんわりした風に包まれて。  全員が空中に浮かび上がって。  魔物が落ちて行った崖下に向かって、運ばれた。  うわわ。こわ。  ルカが飛ばせてくれてるから大丈夫だと思いながらも、怖い。 「は。怖ぇの?」  思わずルカの腕に捕まったら、笑われた。  ……だって、下、透けてるし!  ていうか、風で飛ぶって、どーいうことだよって、思うし!  怖いんだよっ!! 「お前ほんと、軟弱……」  言いながら、ルカの手がオレの肩に回された、と思ったら。  ぐい、と、抱き込まれた。 「……っ」  皆が居るのになにすんだよっ、と思ったけど。  その瞬間、落ちてく様子が視界に入らない事に気付いて。  あ、隠して、くれてるのか。  と理解して、口を閉ざした。  ……だったら、軟弱とか、意地悪言わないで、  優しく、こっち来てれば見えないから、とか、言ってくれたらいいのに。  ……って、ルカがそんな事言ったら、ちょっと気持ち悪いか……。    そんな事を考えながら、ルカの胸元だけ見てる内に、下に到着して、足が、地面に着いた。  はー、良かった。  はー、フワフワしてて怖かった。  そう思いながらも、思わず。 「これ、登る時に使ってほしかった」  そう言ったら。  ルカは、クッと笑い出した。 「だから……戦いに使うかもしれねえから、無理だって言ったろ」  クスクス笑ってオレを見下ろすルカ。 「魔法なんていっこも使わなかったけどな」  ルカがそう言うと。  まわりで3人が苦笑い。 「ソラを取られてめっちゃキレたからでしょ。あいつ、ステータス見たけど、結構強かったわよ? 結界は魔法を跳ね返すタイプだったし」  リアがそんな風に言って肩を竦めると。 「じゃあぶった切って、正解だったな」  ルカが笑う。 「まあでも――――……魔王が遠いか、やっぱり、こないだの戦いで、弱ってんのかもな」  と、ルカが言う。 「どう言う意味?」 「魔王が出現してから魔物が現れたって伝わってるし。よく分かんねえけど、魔王の力と、他の魔物の能力って関連がある気がする。距離が近いほど、魔物が強くなる。今回も、そういう強い魔物が居るって情報から、魔王の居場所を見つけたんだ」 「なるほど……」  そんな話、あったっけ??  いまいち、記憶にないけど。 「こないだまでこの近くに魔王が居たからな。それでさっきの奴もあんなに巨大化して力をもって――――…… 今は逃げて、ここから相当遠い場所にいるのかもな。じゃなきゃ、いくらオレでも、あのサイズを一太刀ってなー?」  ルカがそう言うと。ゴウが、いやいや、と笑った。 「ソラ取られて、ブチ切れたんだろ」 「――――……まー。ちょっとは切れたけど」 「絶対ぇちょっとじゃねえから。ルカが飛んだ瞬間、あいつ終わったなと、オレは思ったぞ」 「オレも思った」 「あたしも思った」  ゴウとキースとリアが、可笑しそうに笑いながら、そんな事を言ってる。 「……つーか、お前、容易く捕まり過ぎなんだよ」  ルカが、ちら、とオレを見て、はー、とため息をつく。 「……だって、後ろから急に、だったし……」  オレのせいなの???  だって、急にふわっと浮いたんだからさ。  ルカだって、一瞬気づかなかったじゃん……。  と、ルカ、怖いから言わないけど。

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