52 / 290

「魔法ワクワク」

   しばらく、降りた付近を捜索していると。 「ルカ、こっちだ」  ゴウの声がする方に行くと、木を大量に薙ぎ倒して、魔物が息絶えていた。  オレは怖いから少し離れて見ていたけど……めちゃくちゃ、デカイ。  オレ、あれに、一瞬捕まってたんだなと思うと、震えが走る。  あーこわい……。  ほんとこわい……。  よくあんなのと、戦えるな。  皆、すごい。  何なら、山登り中に会った、ゲームの中なら雑魚っぽい魔物だって、正直、対峙したらめちゃくちゃこわいし。  ほんと。すごいなあ……。  皆、尊敬。  離れて眺めてるオレ以外の皆は、魔物の近くで見上げてる。 「これ燃やし尽くすの結構大変……」  リアが嫌そうに言ってる。  さっきの足だけなら一瞬だったけど。やっぱり大きいと違うのかな。 「まあ、頑張れよ」  ルカが笑ってそう言って。その後、ふ、と気付いたように。 「リアの魔法に風を合わせてみるか」 「できるの? そんな事」 「やってみようぜ――――……キース、ゴウ。そこで隠れてるソラ連れて、もっと下がってろよ」  ちら、とからかうみたいな視線を送られる。  キースとゴウが笑いながら近づいてきて、一緒にもっと後ろに下がった。 「リア、少しの間、最大で炎出して」 「うん」  ものすごい炎が巻き起こった。  次の瞬間。それに風が吹き込んで、ものすごい勢いで、炎が魔物を包んだと思ったら。――――……さっきと同じ。一瞬で、灰になった。 「うっわぁ、ルカすっごい! これ、戦いの時も使えるんじゃない? 一瞬で消し去れるよ」 「――――……結構魔力使うだろ、特にお前」 「まあそうだけど…… 数が多い時は、使えるかも」  そんな事を楽しそうに話している2人の側にある魔物の灰みたいのに近付いて、思わずしゃがんで、じーっと見つめる。  うーん。  ……すごい。 「ねーリア、どこから火が出るの?」 「ん?」   灰のまえにしゃがみこんだまま、後ろのリアを、見上げる。 「手の中?」 「手の中……じゃないなあ」  リアが面白そうに笑う。オレを見下ろして、どこだと思う?と聞いてくる。 「呪文唱える時、手を出すから、手からなのかなあって思ったんだけど」 「手からは出ないよ。 何て言うんだろ。空間、から?かな」 「空間?」 「手を出すのは、なんとなく気合入れるためだから、いつも出しちゃうけど、手を出さなくても、出来るのよ」  へええ。そうなんだー。  何だかちょっとワクワクしながら立ち上がった。 「魔法ってさ、特訓すると、誰でもできるの?」 「どうだろ。 もともと魔力を持ってないと、そもそも特訓が出来ないかなあ……」 「オレ、ここの世界では魔力あるのかな??」 「んー、今は感じない、けど……」 「特訓したい、オレも、火、出したいー」  せっかく、こんな魔法のある世界に居るんだから、使ってみたい。  リアみたいに、大きな炎じゃなくて、まあなんなら、タバコの火が付くくらいのちっちゃいやつでも全然良いから、出してみたいなー。 「いいよ、じゃあ、今度やってみようか」 「うん」 「精神集中するとこからだけど、大丈夫?」 「……精神集中から???」 「すっごい集中して、念じるの」 「なるほど……」  出来るかな。  今までの人生、そんなに集中せずに、のほほんと生きてきてしまったけど。 「じゃああたしと特訓する前に、他の事が何にも考えられなくなる位、何かに集中して、無になる位の感じになれるように、ちょっと、意識してみて」 「相当難しいこと言われてる気がする、けど……うん、頑張って、みる」  うんうん頷いてると、リアがふふ、と笑う。  その間、隣でずーっと黙ってたルカに気がついて、ふと見上げると、何だかとってもニヤニヤ笑ってる。 「ルカ、なに??」 「いや、別に」    ぷ、と笑うルカに、何でだか、頭をぐりぐり撫でられた。  ……力、強いんだから。優しく撫でてよ。  と一瞬思って。  いやいや、優しくなら撫でてほしいのか。  と、すぐ自分に突っ込んだ。  

ともだちにシェアしよう!