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「ルカの背中で」
「……ん――――……?」
…………なんか。
すごく、揺れてる……。
自分の状態を、ゆっくり確認する。
オレは、眠くて死にそうで。
でも、動いてて。歩いて無くて。
――――……顔を上げようと思ったけれど、なんかクラクラして、断念した。
……あれ……ミウ、は……?
思った瞬間、なんか近くで「みゃぁ」という声が聞こえる。
あ、近くに居る、良かった。
…………あ、オレ。
……おんぶされてるんだ、ルカ、に。
「つか、リア、隣に居たんだから、こんなになる前に止めろよ」
ルカの声。
「だって、踊り子の女の子と、めっちゃ楽しそうに果実酒飲んでるんだもん。あまーい、おいしー、とか、超ニコニコで。可愛かったから止められなかったわよ」
「お前、ほんと、可愛い可愛いって、ソラのこと言うけど……気ぃあんのかよ」
「無いわよ、あたしはダンディな年上が好きなんだから。知ってるでしょ」
「知ってるけど、可愛いのに走んのかって位、気に入ってるだろ」
そんなルカの声。
少し黙って、リアが笑う。
「ルカの方が可愛がってるでしょ」
「……別に?」
…………あ。そっけない返事。
……いーけど別に……。も、寝よ………。
「今日だって、誰の誘いも乗らずに、ソラのとこ来たんでしょ? それとも、今から行くの?」
「……行かねーよ」
「ソラはずっと居るんだから、他の人と遊んだっていいんじゃないの? ソラ寝てるしさ」
「……少し寝かしたら起こす」
「こんな酔って寝てる子起こすより、ルカに誘いかけてた人たちと遊べば? あたし、ソラとミウ、ちゃんと見といてあげるよ?」
「いい」
なんか、眠くて、会話が途切れ途切れで、半分もちゃんと入ってこない……。
繋がる単語で、ルカが、誰とも遊びにいかないのかな、て事は、分かった。
「ねえルカ、ペットは飼わないって言ってなかった?」
「――――……飼うのはソラだろ」
「ソラなんて、もしかしたら明日元の世界に戻っちゃうかもしれないじゃない? 余計ペットなんて、て思うけど」
「――――……」
ルカが少し黙る。
「……良いんだよ。ここに居たいって思う事、増えれば。帰らないかもしれないだろ」
「え。でもソラの意志、関係あるの?」
「分かんねえけど、あるかもしれないだろ。……お前も魔法教えてやれよな」
「――――……」
「料理も作るの楽しみにしてるみてーだし」
「うわー……ルカ」
「……なんだよ」
「マジで、ソラのこと大好きなのね」
「……な事は言ってない」
「言ってる言ってる」
「言ってねーだろ」
「…………嘘でしょ? 本気で言ってないつもりじゃないよね?」
「言ってねーよ」
「………………信じらんない」
何か、リアの呆れたようなクスクス笑い。
オレの事大好き……
とは言ってない…………
って言ってた 今……
いーもんね……別に。
……オレも……ルカなんて…………
たまに優しいから………
…………別にそれだけでも………。
……あれ、ミウは…………?
ミウ、どうしたっけ……?
「ミ、ウ……?」
声にやっと出た一言。
すると、ふわ、と背に何かが乗った。
あ。みう……。
「――――……やっと何か言ったと思ったらミウかよ」
「ルカって言って欲しかったの?」
リアがクスクス笑ってる。
「……つか、オレがソラしょって、その背にミウって、どーいう絵だよ」
なんか、すごく嫌そうなルカの声が、聞こえる。
――――……何が嫌なんだろ…………。
「ゴウが、ルカが誰かと消えるなら、ソラのこと連れて帰ってやるぞって言ったのに、ルカが断ったんじゃない」
「――――……」
「……なんか、ルカも可愛く見えてきたわ」
クスクス笑う、リアの優しい声。
「ソラ、ずっと居ると良いね」
リアが優しい声で何か言いながら、オレの頭を撫でてくれる。
――――……ついでにオレの背中のミウも撫でられたみたいで、みゃ、と聞こえた。
あぁ、かわいーな…………。
――――……ルカの背中。
きもちーな……。
そこでもう耐えられなくなって。
完全に、意識が、途絶えた。
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