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「皆で朝食」
店に着くと、ゴウがオレとミウを見て、可笑しそうに笑った。
「おー、ソラ。ガキどもすげーいっぱい居たな」
「あは。ミウ、大人気みたいだね」
オレがそう言いながら、ゴウの隣に座ると、オレの隣にルカが座った。
「ミウは、この世界で一番人気がある魔物じゃないかな。普通魔物って怖がられるけど、ミウだけはね」
キースも、ふ、と笑いながらそう教えてくれる。
「見てると癒されるもんね」
リアもクスクス笑いながら、オレの膝に居るミウを見てる。
「ね、リア、この子も、リアの魔法で飛べるの?」
「飛べるよ。ただ、あたしの魔法の範囲内に居てくれないと飛べないから、ソラが抱っこしてるなら大丈夫。あんまり高い所を浮かばれてたら、無理だからね」
「分かった」
なるほどー、と納得してると、ルカが「ソラ、ほら」と、オレの口に何かを近づけてくる。
「ちょっと辛いけど、うまい」
自然と口を開けて、もぐ、と口に入れる。
「……わ。辛い! 何これ」
「そこまでじゃねえよ」
クッと笑ってるルカ。
「……っそこまでだよっ」
何これ何これ。
「辛……っっ」
辛すぎて咳まで出てくる。
けほけほしてたら、ルカはぷ、と笑って、水を差し出してきた。
「弱いのか? 辛いの。そこまで辛くねえけど」
「辛さによるけど……これはすごい辛い……」
「そうか? うまいけど」
言いながら、それを平気な顔でモグモグ食べてる。
意地悪したのかと思ったら、辛さに強いだけか。
ルカの鈍感……。
あ、涙出てきた。もう。
その瞬間。オレの膝に座ってたミウが、ふわと浮いて。
ぺろ、とオレの涙を舐めた。
「――――……」
驚いてミウを見つめると。
「みゃ」
と、めっちゃ可愛い顔してオレを見つめる。
ずきゅーーーん。
もう、心臓撃ち抜かれた感じ。
「可愛すぎー! ミウー」
むぎゅ、と抱き締めてると。
――――……ルカがオレの頬を摘まんだ。
「お前あんまりミウミウ言ってると」
「え」
「……ミウ置いてくぞ」
「えっ」
ルカのその言葉に、他3人はぷっと笑ってる。
「ミウに妬いてるみたいだね」
「マジか、ルカ」
「絶対マジよね、やばいわね、あれ」
キースとゴウとリアの声が聞こえて、ルカが少しキツめの視線を向けてる。
「ミウ置いてくとか言わないでよ」
そう言ったら、ちら、と振り返られた。
「……置いてったらどーする?」
「…………オレも置いてって」
「――――……無理」
はー、とため息をついて、ルカがオレを見下ろす。
「離れたら守れねーだろ」
「――――……」
守れないから、離れない。
咄嗟にそんな事言う位は、守ってくれる気、あるんだなーと。
ルカをじっと見つめてしまう。
「もういいからお前もミウも、飯食え」
「うん」
自分も食べながら、ミウにも食べさせつつ。
「なんかさ、ミウの名前つけた方がいいのかなと思ってたんだけど……」
「ん」
「ミウ、が一番似合うから、もうミウでいいのかなあ? 呼ぶと返事してる気がするし。 良い? ミウ?」
「みゃ」
返事してるんだかは分からないけど、みゃ、と言ってしがみついてくる。
「それでいいかなあ?」
ルカ達の方を見て、聞いてみると、皆、いいんじゃない?と笑んでる。
「もうお前ずーっとミウミウ言ってるしな」
ルカもそう言って笑ってる。
「じゃあ、ミウで」
よしよし、とミウを撫でると。
嬉しそうにしてる。めっちゃ可愛い。
「ルカ、今日はどこに行く?」
キースがそう言うと、ルカは少し考えてから。
「ああ――――……今日は海の側の町」
そう言った。
「シャオの町?」
リアが聞くと、ルカは頷きながら、食事を進める。
「あぁ。なんか、話聞いてる時、魚の獲れる量が激減してるって話も聞いたから。海に何か居るんじゃねーのか?」
「なるほど」
「海の魔物かー。船出すことになるかな」
「ちょっと面倒だね」
「まあ、町で船借りて――――……」
皆のそんな会話を聞きつつ、オレはミウとほのぼの食事をしていたのだけれど。ふと気になって。皆の会話が一通り終了してから、ルカを見上げた。
「あのー……」
「ん?」
「オレは今回は……?」
「――――……」
恐る恐る聞いたのだけれど。
「連れてくに決まってるだろ」
ルカがニヤ、と笑って言いきる。
ちーん……。
……まあ。薄々は気付いてました。うん。
落ち込んでるオレを見て、皆は、苦笑いしてる。
「またソラを奪ってくれたら、ルカが一太刀で終わらせてくれるかもな」
ゴウが面白そうに笑う。
「やだよ。 一回死んだみたいな気持ちになるもん。無理」
そう言うと、皆、可笑しそうに笑ってる。
なんか、このメンバーでの食事風景も、なんだか当たり前のみたいに、見慣れてきたなあ、なんて思う。
はー。
海の魔物かー。
…………タコとか? イカとか??
くじらとかみたいなのだったらどうしよう。
……うぅ。ドキドキしてきた。
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