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「やさしく?」
「こっちには居そうもないな。戻るか」
ルカがそう言って、町はずれの奥の小屋から戻ってくる。
何となく返事をせずに、町の方に足を向けた瞬間。
腕をぐい、と引かれた。
「わ」
腕の中から、ふわ、とミウが抜けて、頭上に浮いた。
「みゃ」
可愛い顔して、ふわふわ浮いていく。
小屋の隣の大きな木に、背を押し付けられた。
「何、怒ってんだ、ソラ」
じっと、見つめられる。
「怒ってなんか……」
「返事しねーし、顔も可愛くねえし。何だよ?」
別にいつも可愛くないし。
そんな風に思いながら。オレはルカをじと、と見上げた。
「――――……だって、なんでオレにだけきつくすんの?」
そう言ったら、ルカは、それかよ、と苦笑い。
「何でそれで怒るんだ?」
「……だって女の子には優しくしてるって事だろ?」
「ああ。――――……なるほど、そういう事か」
「……なに?」
「……ちげーよ。お前にする時は、我慢できねえからそーしてるだけ」
「……ん?」
「お前は、どんなにしても、受けてくれるじゃんか」
「――――……」
「すげえ、そそるんだけど。 オレにめちゃくちゃキスされてる時の、お前」
ん??
……そういう事なの???
オレには優しくなくて、女の子には優しくしてるって事じゃなくて?
「……ルカって、オレにああすんのが、好きなの?」
「つーか、お前は、オレにああされんのが、嫌いなの?」
「――――……」
「――――……」
なんか2人して、黙る。
何て答えればいいのかすら、もはやよく分からない。
「――――……」
ルカに顎を捕られて上向かされて。すると、優しく、唇が重なってくる。ゆっくり舌が触れて、優しく、絡む。しばらくの間、優しいまま、キス、される。
「……ん……ふ――――……」
なんか。
ゆっくりと。
ゾクゾク、する。
「こういうキスが好きって言ってたけど」
「――――……」
囁かれて、かと思ったら。
後頭部に回ってきたルカの手が、オレを自分の方に、引き寄せて。
「……っんっ――――……ぅ……」
深く重なって、舌が、めちゃくちゃ乱暴に、オレの口の中、うごく。
「ん、ンっ……っは……」
頭がぼうっと白くなって。がく、と膝が、抜ける。
何の問題もなく、オレを支えて、思うまま、キスしてきて。
「……んぅ、……ン……っ」
キスが外れて。
首筋にルカが舌を、這わす。
「ん、ふ……っ」
「――――……こっちのキスも、好きだって、お前言っただろ」
囁かれた言葉を、真っ白な、頭の中で、理解しようと頑張って。
「お前に、めちゃくちゃキスすんの、好きだからしてんだけど」
「――――……」
「それ、嫌ってこと?」
かぷ、と首筋に噛みつかれて、びく、と体が震える。
「ソラ、どっち? 優しいのだけが良いのかよ?」
「――――……っ」
「ほら。どっちか答えろ」
首筋から顔を上げて、オレをまっすぐに、見下ろす。
「……たまには」
「ん?」
「……優しくしてよ」
ルカは、オレをじー、と見つめて。
それから、ぷ、と笑った。
「オレ、いつも優しくしてると思うんだけど」
……ほぼ9割、激しい方ですけど。
心の中でそう突っ込んでいると。
ルカの手がまた頬にかかって。
――――……楽しそうに微笑んだまま、オレをじっと見下ろした。
「ソラ」
くす、と笑いながら。
名を呼ばれる。
「――――……ソラ」
もう一度。なんだか、ゆっくりと。大事そうに、名を呼んで。
オレに、口づけてくる。
「――――……」
何だか。
心臓が。ぎゅ、と締め付けられるみたいに。きつくて。
顔に、かあっと、血が集まる。
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