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「軽い……」

「船出してほしいっつーなら、出してあげたいって気持ちはあるんだけどね……」  そう言いながら、アランは、ぷかぷか浮いてるミウを見て。  ふ、と笑ってる。 「なあ、ミウって誰かに懐かないと、人が居るとこに来ないんじゃなかったっけ?」  そんなアランの言葉に、ルカが、オレを、親指で指した。 「そのミウは、ソラに懐いてる」 「へえ。――――……ソラね。よろしく」  くす、とアランがオレを見て笑う。 「王子が男イケると思わなかった」 「あ?」  クスクス笑って言われたアランの一言に、ルカが眉を顰める。 「しばらく城で船作ってる時、町で結構女の子と仲良くなったけど――――…… 王子がモテてんの実感したんだよね、女の子達皆、ルカ王子素敵、みたいな感じでさ。関係してる子も多かったでしょ」 「――――……」  ちーん。  思わぬところから、ルカの爛れた性生活が突然飛び込んできた。  …………まあ、アランも同じくだけど。  …………ていうか、その相手の女の子達も軽いし。  やっぱり、皆軽いって事だよね。  この数日で何度も実感してる事を、またまた実感。  まあでも皆が軽くたって、そりゃ好きじゃないとしないだろうから、  この2人とか、モテまくりすぎ、なんだろうけどさ。 「はは、あんだけ女としてて、何でそっから、男?」 「――――……その話、続けないとダメか」  ルカがちょっと不機嫌そう。  …………内心不機嫌なのは、まあ、ルカよりオレだと思うけど。  ……ルカのどスケベ。  ――――……どんだけ女の子としてんだ。  …………ていうか、この目の前に居るこの人もだけど。 「いや、別にいいけど――――……」  アランはくす、と笑ってオレを見下ろした。 「王子に飽きたら、オレとしてみる? さっきキスされてる顔見たら、オレも、初の男もありな気がしてき――――……」  ルカが、オレとアランの間に入って。  完全にオレを、アランの視界から、消した、というのか。 「これは、オレの。 手ぇ出したら、殺す」  ドキ。  …………ドキ?  ――――……ていうか。ちがうちがう。  ルカはいっぱい他の子に手ぇだしてんじゃん。  オレが誰かとしたって、文句言われる筋合いはないじゃん!  ムカムカ。  ……するのだけど、一方で。  そんな風に言ってくれた事に、どきどきして。  ……ちょっと顔が熱いとか。……何でだ??  ちょうどルカが背中に隠してくれているのを良い事に、顔の熱を冷ます事に集中していたら。 「まあその話は置いといて。ちょっと、きっついんだよね、この海は」  アランが、すごく嫌そうな声でそう言ってる。 「どう見ても、普通の波じゃない。絶対何か波を起こしてる原因があって、不規則にも程があるから、波が読めないんだよ。あれはオレでも、転覆、するかもよ?」 「お前以外だと、転覆確実だとは聞いた」 「――――……オレでも、転覆するかも」 「かも、なんだろ?」  ルカの、笑みを含んだセリフに、はー、と、アランがため息をついた。

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