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「ルカのバカ」

  「まあ何か海に居るなら、退治してくれたら、漁も行けるようになるしさ。協力はしたいんだけど……つか、今オレの船、修理中でさ」 「修理?」 「しばらく漁に出れなそうだから、色々部品外してメンテナンスしててさ。かなり分解してるんだよね」 「……それ、どれくらいかかる?」 「どうせ漁にも出れないし、ゆっくりやろうと思ってて。7日位を見てたけけど」 「7日? 長すぎるな」 「それ位経てば、波を起こしてる何かも、どっかいかねえかなーと期待してたんだけど。女の子達と遊びながら、ゆっくり直そうかなーと」 「その7日間、1人でやるつもりだったって事だろ? 他の奴らに手伝わせるとして、どんだけ縮められる?」 「――――……2日縮めて、5日間、かなあ」 「たいして縮まねえな」 「手伝って貰える事はあるけど、オレの船は基本、オレが全部やりたいから」 「――――……」  拘りもって仕事してる人、なんだな。  ルカも、そう思ったのか、それ以上は言わなかった。 「分かった、じゃあ5日間はここ拠点にして、周辺の町見回りながら、お前の船を待つ。でいいか」  ルカがそう言うと。  アランは少しの間黙って。 「――――……あのさ」  と言った。 「何だ?」 「オレ、まだ、船出すとは言ってないんだけど」 「は? 出さねえの?」 「――――……」 「お前の船でしか出れないって、言われてんのに、出さねえって選択肢あんのか?」  ルカっぽいせりふだなあ……。  ルカのまっすぐな言葉は。  なんか。  強い。  アランは、しばし黙って、ルカを見つめていたけれど。  ふと、苦笑いを浮かべた。 「……分かった、出すよ。 転覆しても、文句言うなよ」 「転覆したら、そこは魔法で海岸まで戻るから大丈夫」 「魔法で海に飛んできゃいいじゃん」 「5人魔法で飛ばして、どんな相手かも分かんねえ奴と、魔力無しでとか、そんなリスク負えない」 「オレの船のリスクは?」 「最大限回避しろよ」 「……もし転覆したら、オレの船、どーしてくれんの」 「作り直す金と人手は出してやるよ」  ふ、とルカが笑って言う。  アランは、ふかーくため息をつきながら、不意にオレを見た。 「……この王子、いつもこんな?」 「……多分」  まだそんなに長く一緒に居る訳じゃないから、いつもと聞かれると、微妙なんだけど……。 「多分て?」 「まだ数日しか一緒に居ないから」 「へえ、そうなんだ……でも、大体こんな感じなんだろうな」 「うん。大体そうだと……」  なんか顔を見合わせている内に、可笑しくなってきて、アランと、ぷ、と笑いあった瞬間。  ぐい、と首に回ってきた手に引き寄せられて、ルカに背中を密着させられる。 「お前は、誘われた相手に、近づくな、馬鹿ソラ」  言い放たれる一言。  一瞬にしてムカムカが湧きおこる。 「――――……っ」  別に今は、何もあやしい話してないじゃんかっ!  ……つか、自分はほんとに女の子とし放題だったみたいだし!!  ……っ分かってたけど!!  ルカのバカ……!  ルカに抱きかかえられたまま、  むー、と怒ってるオレを見て、アランは、クッと笑い出す。 「ソラ、お前、なんか大変そうだな」  クスクス笑い続ける。  どういう意味で言ってるんだか、分かんないけど。  確かに、なんか、オレって大変な気がするような。 「大丈夫、オレ、女の子の方が好きだから。王子、安心してよ」  安心ってなんだよ、もうっ。  初めて会った人に何いわれてんの、これ。  ルカは一体何を心配してんだよ、  ルカがいつもいつもこんな風に隣に居る状況で。  オレが、初めて会った、ルカ以外の人と。  ほんとにそんなこと、すると思ってんの??  ルカのバカ、ルカのバカ。

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