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「空に浮いて」

  「とりあえず、町に戻るぞ。皆、アランを探してるから」 「ええ? そうなのか?」  何かちょっと嫌だなと呟きながら、アランが町に向けて歩き出す。  ルカとアランが並んで話してるので、オレは、その少し後ろを歩き始めた。 「ミウ、おいで」  こっそり呼ぶと、ミウが腕の中にふわふわしがみついてきた。  ああ、可愛い。モフモフ。  ルカがどんなにむかつく時でも、ミウは可愛い。  でもよく考えたら、ミウって、羽があるとかもなくて、ふわふわ飛んでるけど、それ魔法だって。……結構すごい子なんじゃ? 「ミウって、オレも連れて飛べるの?」 「みゃ」  無理だよね。と思った瞬間。  ミウがふわとオレの後ろに回ったと思ったら。  オレの体が、突然、ふわっと、浮いた。 「ひえ」  お尻の辺りからぞわっとする感覚。  だ、だって急に、ふわっと浮いて。  ミウ、オレに触ってないのに、浮いてて、正直、めっちゃ怖い。  オレの声にばっと振り返ったルカとアランが、あー、という顔をしてる。 「……こ、こわ……」  かなり高い所に居る。  足も付かず、何にも触らず、浮いてるって。  すごい恐怖。   「大丈夫だ、ソラ、お前位なら平気で」 「ミウ、怖い、離してっ」 「みゃ」  オレが言った瞬間。  浮いてた力がふと消えて、ひゅっと真っ逆さまに落ち――――……。  う、わ。終わった。 「――――……っ……」  ――――……。 「――――……あれ……?」  衝撃はあったけど。  ………痛くない。  ………あれ??  恐る恐る、目を開けると。  オレはルカの上に乗っかってて。抱き止められていた。 「ルカ……?」 「――――……」  受け止めてくれたの? あんなに高い所から落ちたのに?  え、ルカ、大丈夫? 「……る、か?」 「――――……痛ってー……」  ルカの声がして、オレと目が合うと、はー、とため息をつかれた。 「…………お前、ほんと馬鹿、ソラ……」  グシャグシャ髪を撫でられる。 「離せとか言うから、ミウが離したんだろ。言わなきゃお前位全然浮いてられたのに……あー、驚いた……」 「ルカ、今、魔法、使った?」 「……ギリギリ、一番下で浮かせてから抱きとめた。間に合わねえかと思った」 「…………」 「間に合わなかったら、オレ、つぶれてたからな、馬鹿ソラ」 「………………っ……ごめん」  うううー。でもよかった。つぶれてなくて。  安心したら、  ボロボロ涙が溢れ落ちてくる。    ――――……間に合わないかもしれないのに、下に入ってくれたんだ、ルカ。   「泣くなよ。何だよ?」 「……びっくりした。ルカ、つぶれちゃったかと」 「だからあと一歩でぺちゃんこだっつの」 「………………っっ」  ううぅ。  泣いてると、ぐい、と頬を挟まれて、あーん、と口が開けさせられて。 「ん、ぅっ……」  ただでさえ泣いてて呼吸が足りてないのに、めちゃくちゃ深くキスされて。  明らかに酸素不足。  もう起き上がってるルカに抱き締められてキスされて。  離されても、ぐったりしてると。 「ほんとあんたら、ずっとイチャついてんなあ」  くっくっ、とアランが笑う。  ……居るの忘れてた。  ぁ、と、ルカにもたれたままアランを見上げると。 「かーわいい、顔して。ソラ」  オレの頬に、ぷに、とアランが触れる。 「ソラに触んな」  ぴし、とルカがその手を弾いて、オレを腕の中に引き込んだ。 「あ。ミウは?」  空を探すけど、ふと、後ろに浮いてる事に気付いた。 「あ、ミウ」  ミウは、なんだかしょんぼりしてる。 「お前が離せとか言うから離したんだからな」 「ごめんね、ミウ、大丈夫だから……」  ぎゅう、と腕の中に抱き締める。 「ソラは飛べないからな。次から離すなよ?」  ルカが笑いながらミウをぐりぐり撫でた。

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