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「こんなの?」

   ルカは相当町の皆の人気者になってしまったのか、全然こっちには戻ってこず、色んな人に囲まれてずっと楽しそうに話していた。  目をハートにしてるっぽい女の子達も、ルカを取り巻いている。  オレはルカ以外の3人と話しながら、お酒とご飯を楽しんでいた。 「あー、美味しいねえ」  しみじみ言ったオレのそのセリフに、あれ?という顔で皆がオレを見た。 「ソラ、それ2杯目だよね?」 「うん、そうだよ~?」 「なんか、呂律が……やばくねーか?」 「え、もしかしてソラ、すごく弱い?」  リアとゴウがそんな風に言って、キースが苦笑いしてるのが見える。  その時不意に降ってきた声。 「こら! そこまで。もう飲むな、ソラ」  あ、この声は。  ……自由すぎ勇者だ。 「あ、ルカ。この酒、超美味いよー?」  あっはっは。  楽しいなー。  結婚式って、どこの世界でも、やっぱりめでたいよねー。  なんか幸せなオーラに、こっちまで、幸せを貰える気がする。  そこでこんなに美味しいお酒が飲めるなんて。  あー楽しい。 「ルカも飲むなら注いであげるよー」 「……誰だ、ソラに飲ませたの」  ジロ、とルカが、3人を睨む。皆、鼻歌でも歌いそうな顔で、そっぽ向いてる。 「昨夜のソラ、見てただろーが。絶対こいつ弱いんだから」 「弱くないし。取んないでよ、お酒」  奪われたコップを、さっと取り返す。 「あ、こら、お前ふざけんな、もう飲むな」 「やだよう、何で取るんだよう」  ひどいよーと思いながら、じっとルカを見つめると。 「――――……」  ルカがぴた、と止まって、オレを見つめて。  それから、はーーーと、ため息をついた。 「…………何でオレはこんなのが……」 「こんなの……こんなのってオレの事? オレが何なんだよー!」  めちゃくちゃ不愉快な言い方しやがってー!     ルカが苦笑いでオレの頬に触れた。 「絡むな、酔っ払い。顔熱い。マジでこいつ、何杯飲んだ?」 「1杯ちょっと……じゃないかなあ……」  リアが、嫌そうに答えてるのが聞こえる。 「はあ? 1杯? な訳ねえだろ」 「だってソラはミウを抱えてご飯あげながらだったし、自分で注いでないし。あたしがおかわり注いであげただけだと思うんだよね」 「で、まだ2杯目はこれくらい残ってるって事か?」 「うん、多分、そういう事……」  ルカのため息が、すぐ近くで聞こえる。 「ソラ、1杯とちょっとでそんな酔うなよ」 「オレが1杯でそんな酔う訳ないじゃん、全然今平気だし、美味しいし」  ルカから取り返してた酒を、少しまた飲んだら。 「お前それ以上飲んだら――――……」 「飲んだら…………??」 「……抱くから」  言われた言葉に、目が点になってしまう。  仲間の前でとんでもない事言っといて、ルカは平気な顔でオレを見つめ返す。 「えっ、何で?」 「めちゃくちゃ汗かかせて、体から吐き出させる」 「……うわーん、変態ー!!」 「はー?」  ルカの頭上に、かっちーん!という音が見えた。  あ。ちょっと怒ってる。 「つーか、お前はまだこれからどっか行くかもしれねーっつーのに、何でそんなご機嫌になって……」  ぐい、と頬を包まれて、引き寄せられる。 「顔、あっついぞ、馬鹿ソラ!」 「熱くないもん、普通だし……っ」 「オレがどんだけ普通のお前触ってると思ってんだよ、熱いわ!」 「熱くないってばーー!!」  オレとルカのやり取りを見ていた3人が、呆れたように笑い出した。 「ソラはアホだし、ルカは振り回されてるし、いちゃついてるようにしか見えねえな」  ゴウがめちゃくちゃ笑いながらそう言ってくる。 「アホじゃないし!! いちゃついてなんかないし!」 「オレはこんなのに振り回されてなんか」 「あ、またこんなのって言ったし!!」 「……だってお前、こんなのって感じだろ」 「どんな感じだよっ!! もう!!  オレがこんなのだったら、何なんだよっ」 「――――……だから、何でオレは、こんなのが……」 「こんなのが、なんだよっ」  そこで、ルカが、黙ってしまった。

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