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「緩い分、優しい」

  「どーしてこんなのが可愛い、とか、こんなのが好きとか? そういう事?」  リアがクスクス笑いながらそんな風に言ってるけど。 「リア黙ってろ」  ルカがちょっと低い声で言う。リアはぷ、と笑いながら.   「不思議がんなくても大丈夫だよ、ルカ? ソラはあたしから見ても、超可愛いから」  クスクス笑うリア。  大丈夫ってなんなんだー。 「それはペット的なあれだろ。オレのはちょっと違うから、自分で理解不能だっつの……」  苦笑いのルカに、オレはムッとして。 「オレ、ペットじゃないし」  ひどい。ルカ。ペット扱いするなんて。  ちょっと一瞬悲しくなったじゃないか。 「は? オレのは違うって言ってンだよ、馬鹿ソラ。何聞いてんだ」 「…………っ」  大きな手が、オレの頬を余計ちゃんと挟んで、ぐい、と近づかれる。  また、ルカの瞳の青が、良く見える。……あーもう。……綺麗。 「何泣いてンの、お前」  知るか―! まだ泣いて無いし!  オレ男なんだから、そんなほいほい泣いてたまるかー!  酔っ払って涙目なのかな……?  本来オレ、泣くキャラじゃない。  ここ数年、泣いた記憶、思い出せない位で。  何なんだ、ほんとに。  オレ男なのに。  この世界が色々緩すぎるせいで、  男なんだから泣くな、とか。抱かれるとかありえないとか。  とにかく、こうでなきゃいけないとか、こんなのはおかしいとか。  ……オレの基準まで緩くなっていくような。  本来ルカなんてさ。  男同士とか、会ったばっかりとか、最初ほとんど無理無理始まったとか、  出逢いを考えれば、まともに付き合いたくないような相手だし。  こんな世界に1人でポツンとして生きていける訳ないから、  ルカに助けてもらうかわりに……とかで始めたけどさ。  ――――……ほんとに嫌だったら助けてあげられるよと、キースが言ってくれてたし。  ……多分、ほんとに助けてくれる気がするし。  オレがほんとにルカとするのが嫌で、でもここで1人じゃ生きていけないから助けてって泣いたら、今となっては、きっとリアもゴウも、助けてくれる気がするし……。  ……多分、ルカも、きっとそれ以上無理矢理なんてしない。きっとそうだと思う。  助けてもらう代わりに、体自由にしていいよ、なんて。  ……あの時飲んでた変な薬のせいもあって、抱かれてもいいと思って、もう、どうせ夢なんだからもう良いよとか言って。  始まりはそれだったけど。  体と引き換えに、一緒に居てもらってる訳じゃ、ない気がしてる。  よくよく考えたら、こんなさ。  魔王と戦ってる時に、急にど真ん中に落ちた、どう考えたって、あやしいオレを、信じてくれて受け入れて一緒に居てくれる皆に、もう既にすごく感謝してるし。  色々緩いけど、皆、懐も広いというか。  緩い分だけ、優しいというか。  特に、ルカは――――……。 「ソラ? ぼーとしてる? こっち見ろ」  頬に触れてる手が、すごく優しい。  ふ、とルカを見上げて、ルカと視線が合った瞬間。ルカは、ふ、と笑んだ。  「つか、お前、顔熱すぎ。……1杯しか飲んでねえのか、ほんとに」 「ん。そう。……オレ、1杯とかで酔った事なんか、ないんだけど……」  そう言うと、ルカは、ぷ、と笑ってオレを見つめる。 「……お前の飲んでた酒、すげえ薄そうだなあ?」  く、と笑いながら、ルカの手が、すり、と頬を撫でる。 「今日は頭痛くはねえのか?」 「……うん、まだ」 「眠たくはねえの?」 「……ちょっとねむい」  苦笑いしたルカは、オレをひょい、と抱えて、すぐ後ろにあったベンチ席に移動した。どうされるのかなすがままになっていたら、ベンチに寝かされて、ルカの膝枕。 「このまま寝てろ。 オレまだ、この付近の話も聞きてえし」 「っ恥ずかしいんだけど」 「良い。寝ちまえば関係ない。酔っ払いだと思われてるから平気だ」 「…………っ」  ルカの手が、オレの頭に触れて。  髪の毛をよしよし、と優しく撫でる。 「――――……」  途端に、安心感に包まれて。  ……眠たかったのもあって。  オレは。  多分、そこから何秒もしない内に。  ……ルカの膝枕と、撫でられた事によって。  安心してぐっすり眠ってしまうという。  びっくりな事をしてしまった。

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