84 / 290

「夢の中で」

 うー。  ――――……だるい。  眠い。頭痛い。  ここ、どこ。  ――――……白い。  白すぎる。  オレは。  何だかものすごく、白い光の中で、浮いてた。  眩しすぎる位に白い、光の中に。  この光、知ってる。  ――――……あの時だ。  オレが、ルカの世界に飛んだ時に、テレビから出た、あの光。  真っ白で眩しくて、オレを包み込んだ、光。  何か――――……声が、する。 「だからこいつは、こっちじゃないって!!」 「え、どーいうこと?」 「こいつは向こうにそのまま居て、あいつが戻る筈だったんじゃん!」 「え? そうなの? それじゃバランスおかしいじゃん。こっちの世界に来る奴は誰だったんだよ」 「動物にしただろ!」 「あれ、そうだっけー?? あれでも、こいつ、動物の気配しねえ? ……あれ? 良く分かんなくなってきちゃった」 「あ、やっば! 勇者の攻撃、もう終わりそうじゃ――――……うわあ!」 「ああああ!!」  変なやりとりの中。オレは、不意に、ひゅー、と落ちた。  落ちてる間も。なんか、声が、かすかに、聞こえてくる。 「……落ちちゃったよ。どーする?」 「――――……あそこに出て、拾うのもおかしいし…… ちょっと整理して考えてからにしようぜ。しばらくなら大丈夫だろ」 「……あいつ戦いのど真ん中に落ちたけど……さすがに死んだらちょっと……」 「勇者居るし、大丈夫だろ」 「そっか」  ――――……何だ。あの、声。  声だけが、聞こえてたけど――――…… 消えた。  いや、これ――――……今聞いた言葉じゃない。  ああ……あれだ、白い光に包まれた時。  ――――……聞こえてた言葉だ。  今の今迄、すっかり、忘れてた。  なんだろ、これ。   どういう意味なんだろう。全然、意味、分かんない。  …… 夢――――…………かなあ……?  うん。夢だな――――……。  変な夢。  何か、いやな夢。  ここ、どこ――――……。  ルカは……?  こんな、白いとこ、居たくない。  ルカは――――……?  ルカは。  ――――……ルカに、会いたい。 「……ル、カ――――……」  声が、出たような気がした、瞬間。  白い光がさあっと、消えた。 「…ラ。 ソラ……」  あったかい手が頬に触れて、めちゃくちゃブニブニ摘ままれている。 「あっは、ソラ、ほっぺ柔らかすぎー。触らせてー」 「絶対ダメだ」 「なによう、いいじゃないほっぺくらい! ケチ!」 「ダメ」  オレの頬はブニブニと摘ままれて、何ならそのまま持ち上げられそうな勢いで――――……。 「いったい、なー! もう!!」  がば、と起き上がった瞬間。  目の前にあったらしい、ルカの額に激突した。 「痛った!!!」 「……ってえ、この、石頭………」  頬は離されたけど、そんなのよりおでこが痛すぎる。  ルカの低い声も響いてて、ちょっと怖い。 「うううーー……」  痛すぎて、頭を押さえて俯いてると。  多分に苦笑いを含んだ声で、しょうがねえな、とルカが言う。 「ソラ見せろ」  顎を掴まれて顔を上げさせられる。前髪を少し避けられて、押さえていた所を見られる。 「赤くなってるし」  ぷ、と笑って、ルカが立ち上がる。 「キース、腫れてんの、どーにかしてやって」  クックッと笑いながらキースを呼んで、ルカが少し退く。 「ルカ、石頭だよねえ。可哀想に」  キースも苦笑いを浮かべながらそんな事を言って、オレの前に立つと。  オレの額に、触れた。  ズキズキしてた額から、すうっと痛みが消えていく。 「わー……キースありがとうー」 「どういたしまして」  クスクスとキースが笑う。 「サンキュー、キース」  言いながら、隣にルカが座ってくる。  ……だから、何でルカがお礼を言うんだってば。 「ソラ、何の夢見てた?」 「え? 夢?」 「人の膝の上で、うーんうーんってすげえ唸りだして、すげえしかめっ面してるから、起こしてやったんだよ」 「? 夢なんか、見てないけど……?」  全然何も覚えてないですが。 「じゃあ酔っ払ってうなされてただけか」 「ん」  またくしゃくしゃと頭を撫でられる。  優しい、触り方。  何か。――――……夢は覚えてないけど。  少し不安で目が覚めた気がする。  なんだか、ルカの、その手に、安心する。

ともだちにシェアしよう!