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「夢の中で」

 うー。  ――――……だるい。  眠い。頭痛い。  ここ、どこ。  ――――……白い。  白すぎる。  オレは。  何だかものすごく、白い光の中で、浮いてた。  眩しすぎる位に白い、光の中に。  この光、知ってる。  ――――……あの時だ。  オレが、ルカの世界に飛んだ時に、テレビから出た、あの光。  真っ白で眩しくて、オレを包み込んだ、光。  何か――――……声が、する。 「だからこいつは、こっちじゃないって!!」 「え、どーいうこと?」 「こいつは向こうにそのまま居て、あいつが戻る筈だったんじゃん!」 「え? そうなの? それじゃバランスおかしいじゃん。こっちの世界に来る奴は誰だったんだよ」 「動物にしただろ!」 「あれ、そうだっけー?? あれでも、こいつ、動物の気配しねえ? ……あれ? 良く分かんなくなってきちゃった」 「あ、やっば! 勇者の攻撃、もう終わりそうじゃ――――……うわあ!」 「ああああ!!」  変なやりとりの中。オレは、不意に、ひゅー、と落ちた。  落ちてる間も。なんか、声が、かすかに、聞こえてくる。 「……落ちちゃったよ。どーする?」 「――――……あそこに出て、拾うのもおかしいし…… ちょっと整理して考えてからにしようぜ。しばらくなら大丈夫だろ」 「……あいつ戦いのど真ん中に落ちたけど……さすがに死んだらちょっと……」 「勇者居るし、大丈夫だろ」 「そっか」  ――――……何だ。あの、声。  声だけが、聞こえてたけど――――…… 消えた。  いや、これ――――……今聞いた言葉じゃない。  ああ……あれだ、白い光に包まれた時。  ――――……聞こえてた言葉だ。  今の今迄、すっかり、忘れてた。  なんだろ、これ。   どういう意味なんだろう。全然、意味、分かんない。  …… 夢――――…………かなあ……?  うん。夢だな――――……。  変な夢。  何か、いやな夢。  ここ、どこ――――……。  ルカは……?  こんな、白いとこ、居たくない。  ルカは――――……?  ルカは。  ――――……ルカに、会いたい。 「……ル、カ――――……」  声が、出たような気がした、瞬間。  白い光がさあっと、消えた。 「…ラ。 ソラ……」  あったかい手が頬に触れて、めちゃくちゃブニブニ摘ままれている。 「あっは、ソラ、ほっぺ柔らかすぎー。触らせてー」 「絶対ダメだ」 「なによう、いいじゃないほっぺくらい! ケチ!」 「ダメ」  オレの頬はブニブニと摘ままれて、何ならそのまま持ち上げられそうな勢いで――――……。 「いったい、なー! もう!!」  がば、と起き上がった瞬間。  目の前にあったらしい、ルカの額に激突した。 「痛った!!!」 「……ってえ、この、石頭………」  頬は離されたけど、そんなのよりおでこが痛すぎる。  ルカの低い声も響いてて、ちょっと怖い。 「うううーー……」  痛すぎて、頭を押さえて俯いてると。  多分に苦笑いを含んだ声で、しょうがねえな、とルカが言う。 「ソラ見せろ」  顎を掴まれて顔を上げさせられる。前髪を少し避けられて、押さえていた所を見られる。 「赤くなってるし」  ぷ、と笑って、ルカが立ち上がる。 「キース、腫れてんの、どーにかしてやって」  クックッと笑いながらキースを呼んで、ルカが少し退く。 「ルカ、石頭だよねえ。可哀想に」  キースも苦笑いを浮かべながらそんな事を言って、オレの前に立つと。  オレの額に、触れた。  ズキズキしてた額から、すうっと痛みが消えていく。 「わー……キースありがとうー」 「どういたしまして」  クスクスとキースが笑う。 「サンキュー、キース」  言いながら、隣にルカが座ってくる。  ……だから、何でルカがお礼を言うんだってば。 「ソラ、何の夢見てた?」 「え? 夢?」 「人の膝の上で、うーんうーんってすげえ唸りだして、すげえしかめっ面してるから、起こしてやったんだよ」 「? 夢なんか、見てないけど……?」  全然何も覚えてないですが。 「じゃあ酔っ払ってうなされてただけか」 「ん」  またくしゃくしゃと頭を撫でられる。  優しい、触り方。  何か。――――……夢は覚えてないけど。  少し不安で目が覚めた気がする。  なんだか、ルカの、その手に、安心する。

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